ジャニーズ事務所謝罪
2023年9月9日
◆性加害根絶 共有する一歩に◆
ジャニーズ事務所が、創業者であるジャニー喜多川氏による性加害を公式に認めて謝罪した。新社長には所属タレントの東山紀之氏が就いた。だが、喜多川氏のめいの藤島ジュリー景子前社長は当面、代表取締役にとどまる。会社の株を100%保有している状況もすぐには変わらず社名も変更しない。これでは抜本的改革とは言い難い。
7日に藤島氏らと並んで記者会見に臨んだ東山氏。冒頭のあいさつから、意気込みは伝わってきた。「今後の人生を懸けて取り組む」と語り、救済や補償には「法を超えた時間を区切らない対応」をすると明言した。
喜多川氏の性加害については「鬼畜の所業」と断じ、言葉の上では決別を明確にしたように映った。だが、東山氏は所属タレントの最年長で「ジャニーズの長男」とも評され、創業者一族との関係も深い。
ジャニーズ事務所は創業者一族に権力が集中し、組織の透明性に欠け、性暴力も隠蔽(いんぺい)してきた。そこで「長男」として活動してきた東山氏は、その構造の中に組み込まれてきた一人ではなかったか。どのように透明性を担保し、第三者の声を取り入れられるかが問われる。
東山氏に真の改革ができるのかという懸念が象徴的に示されたのが「社名維持」の選択である。非道な性暴力の加害者の名を刻んだ社名を残すことに、社会的納得が得られると判断したなら甘いと言うしかない。その名を聞くことで被害者がどんな痛みを感じるかに思いをはせるべきだ。この判断は国際的な人権擁護の流れにも反している。
外部専門家による再発防止特別チームは、性加害が続いた原因の一つとして、同族経営の弊害を挙げ「解体的出直し」を提言した。だが新体制はそれには程遠い。
藤島氏は代表取締役にとどまり、被害者への補償と救済、所属タレントらの心のケア以外の業務には関わらないとしているが、それは代表権を手放さない理由にはならない。事務所の株式を100%保有しており、ジャニーズ事務所は今も藤島氏のものといえる。
事務所との関係をどうしていくのか。今後の道筋や日程的な目途を示すべきだった。所属タレントをCMに起用してきた企業の一部からは厳しい目が注がれ、事務所への逆風も強まっている。多くの被害者を生んだ悲劇を一企業の問題として矮小(わいしょう)化せず、社会的な教訓をくみ取ることも忘れないようにしたい。
未成年への性暴力に関する法整備を進め、性的少数者を含む全ての人への性加害を許さないという意志を共有していく上において、ジャニーズ事務所の改革がその一歩になってほしい。
ジャニーズ事務所が、創業者であるジャニー喜多川氏による性加害を公式に認めて謝罪した。新社長には所属タレントの東山紀之氏が就いた。だが、喜多川氏のめいの藤島ジュリー景子前社長は当面、代表取締役にとどまる。会社の株を100%保有している状況もすぐには変わらず社名も変更しない。これでは抜本的改革とは言い難い。
7日に藤島氏らと並んで記者会見に臨んだ東山氏。冒頭のあいさつから、意気込みは伝わってきた。「今後の人生を懸けて取り組む」と語り、救済や補償には「法を超えた時間を区切らない対応」をすると明言した。
喜多川氏の性加害については「鬼畜の所業」と断じ、言葉の上では決別を明確にしたように映った。だが、東山氏は所属タレントの最年長で「ジャニーズの長男」とも評され、創業者一族との関係も深い。
ジャニーズ事務所は創業者一族に権力が集中し、組織の透明性に欠け、性暴力も隠蔽(いんぺい)してきた。そこで「長男」として活動してきた東山氏は、その構造の中に組み込まれてきた一人ではなかったか。どのように透明性を担保し、第三者の声を取り入れられるかが問われる。
東山氏に真の改革ができるのかという懸念が象徴的に示されたのが「社名維持」の選択である。非道な性暴力の加害者の名を刻んだ社名を残すことに、社会的納得が得られると判断したなら甘いと言うしかない。その名を聞くことで被害者がどんな痛みを感じるかに思いをはせるべきだ。この判断は国際的な人権擁護の流れにも反している。
外部専門家による再発防止特別チームは、性加害が続いた原因の一つとして、同族経営の弊害を挙げ「解体的出直し」を提言した。だが新体制はそれには程遠い。
藤島氏は代表取締役にとどまり、被害者への補償と救済、所属タレントらの心のケア以外の業務には関わらないとしているが、それは代表権を手放さない理由にはならない。事務所の株式を100%保有しており、ジャニーズ事務所は今も藤島氏のものといえる。
事務所との関係をどうしていくのか。今後の道筋や日程的な目途を示すべきだった。所属タレントをCMに起用してきた企業の一部からは厳しい目が注がれ、事務所への逆風も強まっている。多くの被害者を生んだ悲劇を一企業の問題として矮小(わいしょう)化せず、社会的な教訓をくみ取ることも忘れないようにしたい。
未成年への性暴力に関する法整備を進め、性的少数者を含む全ての人への性加害を許さないという意志を共有していく上において、ジャニーズ事務所の改革がその一歩になってほしい。