岸田内閣改造
2023年9月14日
◆民意に添い説明責任果たせ◆
岸田文雄首相(自民党総裁)の第2次再改造内閣が発足した。首相が政権を担って来月で2年。このところ重要課題への対処で、独善的な姿勢が目につくようになった。新たな内閣は民意に寄り添い、説明責任を果たすことが、政治不信の解消につながると改めて心すべきだ。
再改造内閣では、松野博一官房長官、鈴木俊一財務相、西村康稔経済産業相らが留任。併せて実施した自民党役員改選でも、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長が続投した。来年秋の自民総裁再選に向け、政権基盤が揺るがないよう内閣と党の骨格を維持した「内向き」の人事と言える。
女性閣僚が過去最多と並ぶ5人になったのは評価できる。ただ肝心なのは、首相が掲げる「信頼と共感を得る政治」の実行だ。それには、国会対応を含め政権運営の在り方を見直す必要があろう。
政府は昨年12月、増税を伴う防衛費の大幅増額を決め、他国の領域内を攻撃できる反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出した。
安全保障環境の悪化で、防衛力の向上が求められているのは確かだ。問題なのは「専守防衛」の理念を逸脱し、戦争に加担しかねないとの危惧が、通り一遍の国会答弁では払拭されなかったことだ。
増税分以外の財源を確保する特別措置法を巡っては今年6月、首相が衆院解散をにおわせ、野党の反対論を抑え込む形で成立に持ち込んだ。首相がアピールする「聞く力」と相いれない強権的な手法は控えるべきだ。
東日本大震災後の抑制的な原発政策も転換し、関連法の改正で60年超の運転を可能にしたが、経年劣化による重大事故発生の懸念は置き去りにされた。8月に東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を始めたことには、漁業関係者を中心に風評被害への不安が根強い。
これらの課題で国会審議を尽くしたとは言いがたい。個人情報の漏えいなどトラブルが続出しているマイナンバーカード問題もそうだ。説明責任を首相らが軽んじているとみられても仕方あるまい。
再改造内閣は、マイナカードの総点検を踏まえた取り組み、物価高に対応する経済対策、防衛費や少子化対策の財源などについて、政府の方針をまとめることになる。
どれも国民生活に関わる先送りできない課題だけに、臨時国会を早期に召集して論議を重ねる必要がある。その場で首相や閣僚が国民の「信頼と共感」を得る説明努力をしているかどうか。次期衆院選で、私たちが下す審判の判断基準となろう。
岸田文雄首相(自民党総裁)の第2次再改造内閣が発足した。首相が政権を担って来月で2年。このところ重要課題への対処で、独善的な姿勢が目につくようになった。新たな内閣は民意に寄り添い、説明責任を果たすことが、政治不信の解消につながると改めて心すべきだ。
再改造内閣では、松野博一官房長官、鈴木俊一財務相、西村康稔経済産業相らが留任。併せて実施した自民党役員改選でも、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長が続投した。来年秋の自民総裁再選に向け、政権基盤が揺るがないよう内閣と党の骨格を維持した「内向き」の人事と言える。
女性閣僚が過去最多と並ぶ5人になったのは評価できる。ただ肝心なのは、首相が掲げる「信頼と共感を得る政治」の実行だ。それには、国会対応を含め政権運営の在り方を見直す必要があろう。
政府は昨年12月、増税を伴う防衛費の大幅増額を決め、他国の領域内を攻撃できる反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出した。
安全保障環境の悪化で、防衛力の向上が求められているのは確かだ。問題なのは「専守防衛」の理念を逸脱し、戦争に加担しかねないとの危惧が、通り一遍の国会答弁では払拭されなかったことだ。
増税分以外の財源を確保する特別措置法を巡っては今年6月、首相が衆院解散をにおわせ、野党の反対論を抑え込む形で成立に持ち込んだ。首相がアピールする「聞く力」と相いれない強権的な手法は控えるべきだ。
東日本大震災後の抑制的な原発政策も転換し、関連法の改正で60年超の運転を可能にしたが、経年劣化による重大事故発生の懸念は置き去りにされた。8月に東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を始めたことには、漁業関係者を中心に風評被害への不安が根強い。
これらの課題で国会審議を尽くしたとは言いがたい。個人情報の漏えいなどトラブルが続出しているマイナンバーカード問題もそうだ。説明責任を首相らが軽んじているとみられても仕方あるまい。
再改造内閣は、マイナカードの総点検を踏まえた取り組み、物価高に対応する経済対策、防衛費や少子化対策の財源などについて、政府の方針をまとめることになる。
どれも国民生活に関わる先送りできない課題だけに、臨時国会を早期に召集して論議を重ねる必要がある。その場で首相や閣僚が国民の「信頼と共感」を得る説明努力をしているかどうか。次期衆院選で、私たちが下す審判の判断基準となろう。