ロ朝首脳会談
2023年9月16日

ロシア極東を訪問した北朝鮮の金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党総書記は、プーチン大統領と軍事分野を含む両国の戦略的協力強化で一致した。プーチン氏は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の性能向上につながる技術提供の可能性を示唆。北朝鮮から武器・弾薬の支援を受ける見返りとみられる。
国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアは責任を自覚し、朝鮮半島の緊張を高め、東アジアを不安定化させる行動を慎むべきだ。
両国の軍事協力がどこまで進むか不明だが、北朝鮮の背後にロシアがつく形で、日米韓を揺さぶる狙いがあるのは明らかだ。ウクライナ戦争の影響が東アジアに波及した。
ロシアは北朝鮮の核実験などに対して科された国連の制裁を支持してきたが、2022年5月に中国とともに初めて拒否権を行使。首脳会談に合わせて、今後は同調しないと表明し、日米韓、中国との協調に背を向け、北朝鮮の核・ミサイル開発を容認する方針を示した。核拡散防止条約(NPT)が規定する特別な責任を負う核保有国として極めて無責任な対応だ。
両国の軍事分野の接近が表面化したのは今年7月。朝鮮戦争の休戦協定締結70年に合わせてロシアのショイグ国防相が平壌を訪れ、金総書記と会談した。
ウクライナ戦争の長期化で武器や弾薬不足に苦しむロシアが北朝鮮から大量の弾薬を受け取る見返りに、北朝鮮が技術を十分に確立できていない軍事衛星の打ち上げ技術などを提供する―との懸念が浮上した。
宇宙ロケットの技術は核兵器を運搬するICBMに転用できる。金総書記の訪ロには核・ミサイル開発を担う党、軍幹部が同行しており、北朝鮮側の狙いは明らかだ。
金総書記には軍事支援獲得に加え、ウクライナ侵攻を全面的に支持してロシアにすり寄ることで、最終的に国交樹立を目指す米国に対する立場を強化する狙いがあるだろう。また、最大支援国の中国に対する依存度を薄め、行動の幅を広げたい思惑もありそうだ。
一方、ロシア軍はウクライナ戦争で昨年約1千万発の弾薬を使用し備蓄が底を突いている。北朝鮮はロシア軍も使用可能なソ連式の弾薬を生産、大量に保有しており、既に昨年秋からロシア側への供給を開始、民間軍事会社ワグネルが使用した。
ロシアは北朝鮮に「ロ中朝」による合同軍事訓練を提案したと伝えられ、中国も取り込み3カ国の軍事連携を強化したい考えとみられる。しかし、中国は距離を置き、慎重な姿勢を維持しているようだ。中国には責任ある行動を求めたい。