大谷選手が今季終了
2023年9月20日

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が右肘、右脇腹の相次ぐ故障により、残り試合の欠場を決めて今シーズンを終えた。投打の二刀流で歴史的な活躍を見せてきた今季の「ショー・タイム」は残念な幕引きとなった。
異能ぶりで世界を驚かせてきた大谷選手のプレーは今年、さらに迫力を増した。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から投打ともにフル回転。日本を優勝に導いたWBCでは大会最優秀選手(MVP)に輝き、「世界一の野球選手になる」との目標をかなえた。
大リーグ開幕後もその勢いは衰えなかった。打っては44本塁打を放ち、日本選手初の本塁打王が有力だ。投げても既に10勝をマークし、2年連続で「2桁本塁打、2桁勝利」の偉業を史上初めて記録した。7月には、1日に2試合行うダブルヘッダーの第1試合で被安打1の完封勝利。第2試合では2本塁打という漫画の世界のような快挙も演じた。
この快進撃に野球ファンならずともくぎ付けになり、メディアはその動向をきめ細かく追った。大リーグ公式ホームページでは「OHTANI」がトップニュースになることが多く、大きな本塁打や強烈な安打を、今季の「最長飛距離」「最長滞空時間」「最速打球速度」など詳細なデータを添えて紹介した。
プレー以外でも魅力を発散した。柔らかな笑顔。相手を気遣うさわやかなマナー。WBC決勝ではリーダーシップを示す一面も見せた。スターが並ぶ米国戦を前に「憧れるのをやめましょう。憧れてしまっては超えられない」と仲間を鼓舞した。
こうしたエピソードも含め、大谷選手は「スポーツは楽しい」というメッセージを子どもたちに伝えた。野球少年・少女らの憧れはさらに大きくなったことだろう。
春先からの休みなしの奮闘が、古傷の右肘靱(じん)帯(たい)の故障を再発させたのだろうか。日本ハム時代から二刀流の負担を考慮して、大谷選手は先発登板に十分な間隔を空けてきた。昨季までは中6日以上が多かったが、今季は開幕当初から、多くの先発投手と同じ中5日を軸にローテーションをこなした。
心配されるのは右肘の治療だ。エンゼルス移籍後の2018年秋に右肘の手術を受けた際は、翌19年5月から打者のみで出場。投手としての復帰は20年からになった。実施すれば2度目となる手術の成功と、苦しいリハビリの克服を祈るしかない。投打双方での完全復帰を25年春と仮定しても大谷選手はまだ30歳。「二刀流の勇姿」をもう一度、見せてほしい。