日本版DBS
2023年9月26日
◆性犯歴確認 実効性確保せよ◆
子どもと接する仕事に就こうとする人に性犯罪歴がないかを確認する「日本版DBS」の導入に向け、こども家庭庁の有識者会議が制度案をまとめた。これを踏まえ、政府は来年の通常国会への提出を目指す。学校や塾などで子どもに対する性犯罪は後を絶たない。法整備は待ったなしだ。
制度案では、学校や保育所、児童養護施設などに確認を義務付ける一方、学習塾や放課後児童クラブといった民間の事業者は任意で確認を行い、国が認定して公表。確認できる情報は不同意わいせつ罪などで、刑事裁判によって有罪判決が確定した「前科」に限る。
しかし保護者からは、学習塾などにも犯歴確認を義務化するよう求める声が相次いでいる。犯歴確認は就業制限につながることもあり、憲法が保障する「職業選択の自由」との兼ね合いから、裁判所による厳格な事実認定を経た前科に絞り込んだ。この点も抜け道にならないかという懸念が広がっている。
DBSは、子どもに対する性犯罪を許さないという強いメッセージになる。導入を急がなければならないが、法案化の過程で実効性を確保するため、さらに知恵を絞る必要がある。
性犯罪歴確認のひな型になったのは、英国の「Disclosure and Barring Service(前歴開示・前歴者就業制限機構)」。子どもに関わる仕事や活動で、ボランティアも含め就業希望者の犯歴照会を雇用主に義務付け、性的虐待などの犯歴がある人物を雇った場合には犯罪になる。有罪判決に至らなかった事案の情報も照会できる。
日本版で、有識者会議は民間の学習塾などについて「設置や運営などで公的関与が大きい学校や保育所と異なる」として、犯歴確認を義務化せず認定制を提案。政府は保護者の信頼を得られることから、多くの事業者が手を挙げるとし「実質的に義務化と同程度の状況になる」と強調する。ただ認定事業者になれば従業員の研修などを求められるとみられ、中小の塾などは負担を嫌う可能性もある。
懸念はまだある。警察が捜査しても検察が不起訴処分にした事案は犯歴確認の対象にならず、被害者側と示談して起訴を免れればチェックを受けなくて済む。各地の自治体が迷惑防止条例などに規定する性犯罪についても、罪となる行為にばらつきがあるとの理由で対象から外れている。
事業者は本人の同意を得て国のデータベースで犯歴の有無を確認し、雇うかどうかを決める。再犯率の高さを考えると、より多くの情報を提供できるようにする方向を目指すべきだ。
子どもと接する仕事に就こうとする人に性犯罪歴がないかを確認する「日本版DBS」の導入に向け、こども家庭庁の有識者会議が制度案をまとめた。これを踏まえ、政府は来年の通常国会への提出を目指す。学校や塾などで子どもに対する性犯罪は後を絶たない。法整備は待ったなしだ。
制度案では、学校や保育所、児童養護施設などに確認を義務付ける一方、学習塾や放課後児童クラブといった民間の事業者は任意で確認を行い、国が認定して公表。確認できる情報は不同意わいせつ罪などで、刑事裁判によって有罪判決が確定した「前科」に限る。
しかし保護者からは、学習塾などにも犯歴確認を義務化するよう求める声が相次いでいる。犯歴確認は就業制限につながることもあり、憲法が保障する「職業選択の自由」との兼ね合いから、裁判所による厳格な事実認定を経た前科に絞り込んだ。この点も抜け道にならないかという懸念が広がっている。
DBSは、子どもに対する性犯罪を許さないという強いメッセージになる。導入を急がなければならないが、法案化の過程で実効性を確保するため、さらに知恵を絞る必要がある。
性犯罪歴確認のひな型になったのは、英国の「Disclosure and Barring Service(前歴開示・前歴者就業制限機構)」。子どもに関わる仕事や活動で、ボランティアも含め就業希望者の犯歴照会を雇用主に義務付け、性的虐待などの犯歴がある人物を雇った場合には犯罪になる。有罪判決に至らなかった事案の情報も照会できる。
日本版で、有識者会議は民間の学習塾などについて「設置や運営などで公的関与が大きい学校や保育所と異なる」として、犯歴確認を義務化せず認定制を提案。政府は保護者の信頼を得られることから、多くの事業者が手を挙げるとし「実質的に義務化と同程度の状況になる」と強調する。ただ認定事業者になれば従業員の研修などを求められるとみられ、中小の塾などは負担を嫌う可能性もある。
懸念はまだある。警察が捜査しても検察が不起訴処分にした事案は犯歴確認の対象にならず、被害者側と示談して起訴を免れればチェックを受けなくて済む。各地の自治体が迷惑防止条例などに規定する性犯罪についても、罪となる行為にばらつきがあるとの理由で対象から外れている。
事業者は本人の同意を得て国のデータベースで犯歴の有無を確認し、雇うかどうかを決める。再犯率の高さを考えると、より多くの情報を提供できるようにする方向を目指すべきだ。