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地域公共交通再生法

2023年9月27日
◆採算以外の要素も考慮して◆

 改正地域公共交通活性化再生法が10月1日に施行される。自治体、鉄道事業者が入った再構築協議会を国が設置し、赤字路線の存廃、バス転換について国主導で話し合うことが柱だ。採算性以外の要素も幅広く見て判断するよう提案したい。

 例えば、国土の強靱(きょうじん)化や均衡ある発展、地域の活性化、貨物輸送網の確保、全国鉄道ネットワークの維持も考慮するのである。

 協議の対象は1キロ当たりの1日平均乗客数を示す輸送密度が千人未満の線区が中心。新型コロナウイルス感染症の影響が薄い2019年度では100線区程度ある。この中から事業者の要請を受けて話し合う。高齢化や人口減少が続いており、長期的な視点が不可欠なのは言うまでもない。

 JR旅客会社などが赤字路線の維持をどう考えているかを見てみよう。JR北海道が全路線の約半分について「単独では維持困難」と16年に表明。JR東日本、西日本なども協議会の設置を国に要請する方針。JR側は不採算路線の切り捨てに前向きとも指摘できる。

 赤字路線の維持には、鉄道事業者、国や地元自治体、利用者の応分の負担が必要だ。事業者は、黒字の区間の利益で支援する「内部補助」をできるだけ活用し、存続を考えるべきだろう。地元自治体の負担を求めるのであれば、路線の収支も含め事業経営をできるだけ透明化すべきである。

 国に対しては、新幹線の整備が一段落して鉄道予算に余裕が出れば、維持管理の予算をどれだけ拡充するのか長期的な戦略を示すよう求める。

 自治体では、鉄道支援のため滋賀県のように「交通税」導入を目指すのも一つの方策だ。鉄道だけでなく通学、通院に必要なバス路線など移動手段の選択肢を将来世代のため残すのが目的だ。地域の持続可能性を高める先駆的な取り組みと評価できる。

 公共交通の再生では、採算性以外にも検討すべき多くの課題がある。一つは人口減少だ。

 政府は少子化対策を進めているとするが、効果は乏しい。東京一極集中など都市に人が集まり続け、地方ほど減少が深刻と言える。バスに転換したとしても、減少が続く限りは対症療法に過ぎない。廃止に歯止めをかける方法も考えねばならない。

 次は自然災害の増加だ。近年は豪雨や大雪によって、鉄道が被災する例が目立っている。赤字路線では多額の費用がネックとなって復旧が進まないケースもある。災害と存廃の問題は切り離し、被災路線を早期に復旧させる制度を国はつくる必要がある。

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