核兵器禁止条約会議
2023年12月7日
◆日本は敵対視でなく対話を◆
核の開発や保有、使用、使用の威嚇を全面的に違法化した核兵器禁止条約の第2回締約国会議がニューヨークの国連本部で開かれ、核抑止論からの脱却を求める政治宣言を採択して閉幕した。
同条約は93の国・地域が署名、69カ国・地域が加盟する。今会議には被爆者や広島、長崎の両市長が参加したが、日本政府の姿はなかった。米ロ中など核保有国の出席もなかった。一方、北大西洋条約機構(NATO)加盟のドイツやベルギー、ノルウェーに加え、オーストラリアがオブザーバー参加した。いずれも米国の「核の傘」に安全保障を依存しているが、前回同様、禁止条約加盟国の声に耳を傾け、対話する道を選んだ。
対して岸田文雄首相は一貫して後ろ向きだ。連立政権を組む公明党がオブザーバー参加を促したが「条約に核兵器国は一国も参加しておらず、出口に至る道筋は立っていない」と従来の立場を維持し続けた。その政治姿勢は間違っている。核を巡る国際情勢は今、未曽有の危機に直面しており、禁止条約を推進するグローバルサウス、つまり新興・途上国との連携が何より戦略的に重要だからだ。
ロシアのプーチン大統領は今年に入って新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を表明。隣国ベラルーシに核を配備し、最近も包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回した。米中対立が先鋭化する裏で中国も核増強を加速させ、米国防総省は30年には核弾頭数が千発を超えると推計している。そうなれば二大核大国の米ロと大差はなくなる。
こんな中ロの動向を受け、米国でも「核軍拡を進めるべきだ」との論調が出始めている。核の役割を強化する動きが進行中だ。冷戦後、国際社会が築いてきた核軍縮の基盤は深刻な打撃を受け、崩壊への岐路にすら直面しているのかもしれない。
こうした状況を踏まえて締約国会議は政治宣言で、核軍縮に進展のないまま核兵器が存在することは「人類全体への実存的脅威」と指摘。核抑止の永続化が核軍縮の進展を妨害し、核による威嚇は「軍縮・不拡散体制と国際の平和と安全を損なう」と警鐘を鳴らした。
核使用のリスクに現実味があるからこそ核に明確なノーを突き付けるグローバルサウスの主張に耳を傾け国際社会全体が中ロへの圧力を強め、米国にも理解を求める時ではないのか。
にもかかわらず日本政府内からは「禁止条約は日本の安全保障のことを考えていない」といった批判を聞く。しかし被爆国が同条約を敵対視している場合ではない。対話を進め次回こそはオブザーバー参加すべきだ。
核の開発や保有、使用、使用の威嚇を全面的に違法化した核兵器禁止条約の第2回締約国会議がニューヨークの国連本部で開かれ、核抑止論からの脱却を求める政治宣言を採択して閉幕した。
同条約は93の国・地域が署名、69カ国・地域が加盟する。今会議には被爆者や広島、長崎の両市長が参加したが、日本政府の姿はなかった。米ロ中など核保有国の出席もなかった。一方、北大西洋条約機構(NATO)加盟のドイツやベルギー、ノルウェーに加え、オーストラリアがオブザーバー参加した。いずれも米国の「核の傘」に安全保障を依存しているが、前回同様、禁止条約加盟国の声に耳を傾け、対話する道を選んだ。
対して岸田文雄首相は一貫して後ろ向きだ。連立政権を組む公明党がオブザーバー参加を促したが「条約に核兵器国は一国も参加しておらず、出口に至る道筋は立っていない」と従来の立場を維持し続けた。その政治姿勢は間違っている。核を巡る国際情勢は今、未曽有の危機に直面しており、禁止条約を推進するグローバルサウス、つまり新興・途上国との連携が何より戦略的に重要だからだ。
ロシアのプーチン大統領は今年に入って新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を表明。隣国ベラルーシに核を配備し、最近も包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回した。米中対立が先鋭化する裏で中国も核増強を加速させ、米国防総省は30年には核弾頭数が千発を超えると推計している。そうなれば二大核大国の米ロと大差はなくなる。
こんな中ロの動向を受け、米国でも「核軍拡を進めるべきだ」との論調が出始めている。核の役割を強化する動きが進行中だ。冷戦後、国際社会が築いてきた核軍縮の基盤は深刻な打撃を受け、崩壊への岐路にすら直面しているのかもしれない。
こうした状況を踏まえて締約国会議は政治宣言で、核軍縮に進展のないまま核兵器が存在することは「人類全体への実存的脅威」と指摘。核抑止の永続化が核軍縮の進展を妨害し、核による威嚇は「軍縮・不拡散体制と国際の平和と安全を損なう」と警鐘を鳴らした。
核使用のリスクに現実味があるからこそ核に明確なノーを突き付けるグローバルサウスの主張に耳を傾け国際社会全体が中ロへの圧力を強め、米国にも理解を求める時ではないのか。
にもかかわらず日本政府内からは「禁止条約は日本の安全保障のことを考えていない」といった批判を聞く。しかし被爆国が同条約を敵対視している場合ではない。対話を進め次回こそはオブザーバー参加すべきだ。