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マイナ誤登録8千件

2023年12月15日
◆現行保険証廃止 性急すぎる◆

 政府は、トラブルが相次いだマイナンバーの総点検結果を公表した。

 精査対象は計約8208万件で、うち他人のマイナンバーをひも付けるミスがあったのは0・01%の8351件。総点検前の先行実施分なども含めると計1万5907件。発生率は低いが、厳格管理が当然の個人情報を扱う国の制度でこのトラブル数は尋常ではない。

 マイナカードを使う「マイナ保険証」の登録済みデータを住民基本台帳と突き合わせて不一致だった約139万件については来春まで確認作業が続く。

 その中で、岸田文雄首相は、マイナ保険証に一本化するため、現行の健康保険証を来年秋に廃止する従来方針の堅持を明言した。対応が難しい高齢者らのフォローはなお不十分で、あと1年足らずでの保険証廃止は強引ではないか。

 マイナ保険証の登録は7100万枚を超えたが、病院での利用率はトラブル続発のために低下し、10月は4・49%だった。期限を区切れば一気に普及が進むとの狙いだろうが、1年足らずで国民の不安を果たして解消できるのだろうか。

 政府はデータ照合を厳格化し、将来は自動化したシステムを導入するという。それでも、介護施設にいる寝たきりの高齢者などマイナカードを作ったり、暗証番号が管理できず使えなかったりする人はいる。

 このため政府は、暗証番号の設定が不要な「顔認証マイナンバーカード」発行を決めた。これをマイナ保険証として使う際は、医療機関にある読み取り機で顔認証して本人確認する。しかし現状でも、機械の不具合で顔認証できないトラブルが相次ぐ。そもそも寝たきりの人や障害がある人など読み取り機へ近づくのが困難な人もいる。

 次善の策として窓口職員がカードの顔写真を目視して本人確認してもいいという。暗証番号入力が必要な証明書のコンビニ発行、オンラインでの行政手続きなどには対応せず、当面はマイナ保険証にしか使えない。このようなカードなら現行保険証とどこが違うのか。

 保険証廃止後も、最大1年間は使用可能にし、マイナ保険証のない人には資格確認書を発行するなど、マイナ保険証への一本化には手間暇、予算がかかる。ならば現行保険証を引き続き使えば、解決は容易なはずだ。もう少し時が流れ、全国民が普通に1台ずつスマホを持つ時代には、マイナ制度は自然に生活基盤となるだろう。性急に実現しなければならない事情があるのか。まずは、国民が納得と安心感を持って利用できるよう制度安定に手を尽くし、説明を重ねることが必要だ。

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