日本ASEAN50年
2023年12月20日
◆緊密な協力関係 貴重な資産◆
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の交流開始50周年に合わせた特別首脳会議が東京で開かれた。海洋の安全保障協力や経済連携の拡大で合意し、協力の将来像を示す共同声明を採択した。ASEANとの緊密な関係は日本外交の貴重な資産だ。その一層の発展を確認したことを評価したい。
軍事政権下のミャンマーを除く9カ国と将来の加盟を控える東ティモールが参加。岸田文雄首相は今後5年間に官民で計350億ドル(約4兆9千億円)以上の資金が行き渡るようにすると表明した。
ASEANは、東西冷戦とベトナム戦争のさなかの1967年、大国の介入を警戒する5カ国が地域の安定を支えるため設立、その後10カ国に拡大した。目覚ましい経済成長を遂げた国が多く「最も成功した途上国の地域協力機構」ともいわれる。人口は計約6億8千万人で、欧州連合(EU)や北米の通商協定より多く、経済規模は日本の8割程度にまで拡大している。
記者発表で共同議長のインドネシアのジョコ大統領は「日本は信頼できるパートナーだ」と強調した。だが、信頼確立の道は平たんではなかった。
交流は73年、東南アジアの天然ゴム産業に打撃を与える日本の合成ゴム輸出に不満を募らせたASEANの申し入れで、閣僚級会合が開かれたのが始まりだ。第2次大戦で日本軍が東南アジアの大半を支配し、反日感情が残っていた上、高度成長期に日本製品が各国にあふれて「経済侵略」と批判された。74年の田中角栄首相の歴訪時には反日デモ・暴動が起きた。
その反省から77年に歴訪した福田赳夫首相は(1)日本は軍事大国にならない(2)心と心の触れ合う関係(3)対等なパートナー―という東南アジア外交の3原則「福田ドクトリン」を打ち出した。政府開発援助(ODA)やカンボジア和平での尽力、アジア通貨危機の際の金融支援といった協力に加え、80年代後半から本格化した日本企業進出によって関係は緊密になった。この原点を忘れてはならない。
会議で海洋安保の協力が議題となったほか、岸田首相とマレーシアのアンワル首相の個別会談では同志国軍を支援する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を適用し、救難艇やドローンの供与で合意した。
いずれも中国の海洋進出が念頭にあるが、ASEANは中国と関係が密接な国が多い。「中国包囲網」と受け取られかねない動きには慎重さが必要だ。
成長とともに格差の拡大が深刻化し、社会保障制度づくりが課題の国も多い。成長を、国民が実感できる真の豊かさに結び付ける協力が必要だ。
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の交流開始50周年に合わせた特別首脳会議が東京で開かれた。海洋の安全保障協力や経済連携の拡大で合意し、協力の将来像を示す共同声明を採択した。ASEANとの緊密な関係は日本外交の貴重な資産だ。その一層の発展を確認したことを評価したい。
軍事政権下のミャンマーを除く9カ国と将来の加盟を控える東ティモールが参加。岸田文雄首相は今後5年間に官民で計350億ドル(約4兆9千億円)以上の資金が行き渡るようにすると表明した。
ASEANは、東西冷戦とベトナム戦争のさなかの1967年、大国の介入を警戒する5カ国が地域の安定を支えるため設立、その後10カ国に拡大した。目覚ましい経済成長を遂げた国が多く「最も成功した途上国の地域協力機構」ともいわれる。人口は計約6億8千万人で、欧州連合(EU)や北米の通商協定より多く、経済規模は日本の8割程度にまで拡大している。
記者発表で共同議長のインドネシアのジョコ大統領は「日本は信頼できるパートナーだ」と強調した。だが、信頼確立の道は平たんではなかった。
交流は73年、東南アジアの天然ゴム産業に打撃を与える日本の合成ゴム輸出に不満を募らせたASEANの申し入れで、閣僚級会合が開かれたのが始まりだ。第2次大戦で日本軍が東南アジアの大半を支配し、反日感情が残っていた上、高度成長期に日本製品が各国にあふれて「経済侵略」と批判された。74年の田中角栄首相の歴訪時には反日デモ・暴動が起きた。
その反省から77年に歴訪した福田赳夫首相は(1)日本は軍事大国にならない(2)心と心の触れ合う関係(3)対等なパートナー―という東南アジア外交の3原則「福田ドクトリン」を打ち出した。政府開発援助(ODA)やカンボジア和平での尽力、アジア通貨危機の際の金融支援といった協力に加え、80年代後半から本格化した日本企業進出によって関係は緊密になった。この原点を忘れてはならない。
会議で海洋安保の協力が議題となったほか、岸田首相とマレーシアのアンワル首相の個別会談では同志国軍を支援する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を適用し、救難艇やドローンの供与で合意した。
いずれも中国の海洋進出が念頭にあるが、ASEANは中国と関係が密接な国が多い。「中国包囲網」と受け取られかねない動きには慎重さが必要だ。
成長とともに格差の拡大が深刻化し、社会保障制度づくりが課題の国も多い。成長を、国民が実感できる真の豊かさに結び付ける協力が必要だ。