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自民2派閥に強制捜査

2023年12月21日
◆徹底解明しうみを出し切れ◆

 自民党派閥の「政治とカネ」の闇に強制捜査のメスが入った。東京地検特捜部が政治資金規正法違反(不記載など)容疑で、安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の事務所を家宅捜索した。

 安倍派に関しては、公訴時効が完成していない最近5年分だけでも、政治資金パーティーの収入から5億円規模が議員側にキックバック(還流)され、裏金になったとみられている。

 自民各派閥では、1枚2万円のパーティー券をノルマ以上に売りさばいた議員に対し、超過分を還流させる取り扱いが長年行われていた。多くの派閥は政治資金収支報告書に記載していたが、安倍派は記載していなかったという。

 具体的には、5億円規模のパーティー券収入と還流金支出がいずれも記載されておらず、不記載額は収支合わせて10億円に上るとされる。巨額の規正法違反容疑と言わざるを得ない。

 規正法は政治団体の会計責任者に収支報告書の提出義務を課しており、刑事責任がまず検討されるのは会計責任者だ。

 特捜部は、事情聴取した安倍派会計責任者の供述や還流議員リストなどの客観資料で、既に容疑をある程度裏付けたとみられる。さらに聴取対象を拡大して、中枢幹部らの関与を明らかにしなければならない。

 聴取に議員秘書からは還流分について「派閥から(収支報告書に)記載しなくていいと指示された」との供述が出ており、議員本人の同様の証言もある。事務職員である会計責任者の独断とは考えにくい。

 捜査で派閥内の意思決定の経緯や指揮命令系統を明確にしてほしい。とりわけ、辞任した松野博一前官房長官ら実務を取り仕切る歴代事務総長の関与が焦点となろう。

 安倍派がいつから、なぜ、こうした取り扱いを始めたのかも特定すべきだ。故人ではあるが、安倍晋三元首相、細田博之前衆院議長ら歴代会長の役割も明確にしなければならない。二階派でも5年間で億単位のパーティー券収入が不記載だったとみられる。ただ、還流分は派閥側支出と議員側収入に記載されており、会計責任者は聴取に不記載を認めているようだ。

 20年以上前の政治改革で、政党以外への企業・団体献金が禁止された代わりに、政治資金パーティーによる資金集めの仕組みが温存された。「抜け道」的制度であり、規正法改正など抜本改革の議論が必要だ。

 特捜部には派閥中枢幹部の関与の有無など不正の構図の徹底解明を急いでもらいたい。事実関係と責任の所在を明確にし、うみを出し切らなければその先の政治改革議論に進めない。

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