与党税制改正大綱
2023年12月22日
◆時代に合う改革が見えない◆
自民、公明両党は2024年度の与党税制改正大綱を決めた。岸田文雄首相が実現を求めた所得税、住民税の定額減税を中心に、個人も企業も減税がずらりと並んだ。
負担増を徹底的に回避し、財政規律を省みない内容だ。増税や物価高への批判をはね返そうとする政策だが、定額減税に対する世論の評価は芳しいものではない。財政悪化がもたらす将来不安が広がっている。
アベノミクスが始まって10年がたち、経済情勢は大きく変化し、安倍政権以来の政策は多くの分野で転機を迎えている。税制も例外ではない。しかし、時代の要請に合致した改革の構想や方向を、今年の大綱から読み取ることはできない。
定額減税と非課税世帯などへの給付には5兆円規模の国費が投入される。除外されるのは年収2千万円超の富裕層だけだ。1人当たり4万円のばらまき型の支援は本当に必要だろうか。
首相はこれまでの税収増を国民に還元すると訴えた。しかし鈴木俊一財務相が指摘したように、増加した税収は既に使ってしまっている。最近の税収は前年同期を下回るようになっている。定額減税によって、税収の穴は一段と広がるだろう。
防衛力強化のための法人税、所得税の増税は今年も決定を見送られた。所得税はともかく、法人税だけ先行させる手もあった。企業だけ負担が先に決まることに経済団体は反発するだろうが、一部だけでも財源を確定する意味は大きいはずだ。中長期の防衛政策を考えれば安定財源の確保を急がねばならず、臨機応変さが求められる。
釈然としないのは扶養控除の縮小だ。高校生年代の子どもがいる世帯を対象に、所得税で年38万円から25万円に、住民税で年33万円から12万円に引き下げる。中学生までだった児童手当を拡充し、高校生の世帯にも支給する代わりに、扶養控除を縮小するという。児童手当の支給額は、控除縮小に伴う所得税などの増額分よりも大きいから、問題ないように見える。
しかし、首相は「異次元の少子化対策」を掲げる。高校生はお金のかかる年代であり、二重に支援することは不自然ではない。あえて扶養控除を縮小する必要があるのか。
財政規律を守るのであれば、定額減税の対象を年収によってもっと絞り込めばいい。扶養控除を継続する財源を生み出すことができるはずだ。
最優先するべき政策は少子化対策だ。本当に支援が必要な層を考え、減税や給付が行き渡るようにする仕組みをつくらねばならない。扶養控除の縮小を正式決定するのは来年だ。見直す時間は十分にある。
自民、公明両党は2024年度の与党税制改正大綱を決めた。岸田文雄首相が実現を求めた所得税、住民税の定額減税を中心に、個人も企業も減税がずらりと並んだ。
負担増を徹底的に回避し、財政規律を省みない内容だ。増税や物価高への批判をはね返そうとする政策だが、定額減税に対する世論の評価は芳しいものではない。財政悪化がもたらす将来不安が広がっている。
アベノミクスが始まって10年がたち、経済情勢は大きく変化し、安倍政権以来の政策は多くの分野で転機を迎えている。税制も例外ではない。しかし、時代の要請に合致した改革の構想や方向を、今年の大綱から読み取ることはできない。
定額減税と非課税世帯などへの給付には5兆円規模の国費が投入される。除外されるのは年収2千万円超の富裕層だけだ。1人当たり4万円のばらまき型の支援は本当に必要だろうか。
首相はこれまでの税収増を国民に還元すると訴えた。しかし鈴木俊一財務相が指摘したように、増加した税収は既に使ってしまっている。最近の税収は前年同期を下回るようになっている。定額減税によって、税収の穴は一段と広がるだろう。
防衛力強化のための法人税、所得税の増税は今年も決定を見送られた。所得税はともかく、法人税だけ先行させる手もあった。企業だけ負担が先に決まることに経済団体は反発するだろうが、一部だけでも財源を確定する意味は大きいはずだ。中長期の防衛政策を考えれば安定財源の確保を急がねばならず、臨機応変さが求められる。
釈然としないのは扶養控除の縮小だ。高校生年代の子どもがいる世帯を対象に、所得税で年38万円から25万円に、住民税で年33万円から12万円に引き下げる。中学生までだった児童手当を拡充し、高校生の世帯にも支給する代わりに、扶養控除を縮小するという。児童手当の支給額は、控除縮小に伴う所得税などの増額分よりも大きいから、問題ないように見える。
しかし、首相は「異次元の少子化対策」を掲げる。高校生はお金のかかる年代であり、二重に支援することは不自然ではない。あえて扶養控除を縮小する必要があるのか。
財政規律を守るのであれば、定額減税の対象を年収によってもっと絞り込めばいい。扶養控除を継続する財源を生み出すことができるはずだ。
最優先するべき政策は少子化対策だ。本当に支援が必要な層を考え、減税や給付が行き渡るようにする仕組みをつくらねばならない。扶養控除の縮小を正式決定するのは来年だ。見直す時間は十分にある。