ダイハツ不正
2023年12月23日
◆「現地現物」主義 見せかけか◆
ダイハツ工業の車は本当に安全なのだろうか。ダイハツは品質・安全の試験などに不正があり、全ての車の出荷を停止すると発表した。国土交通省も立ち入り検査を始めた。品質不正があったのは64車種に及び、トヨタ自動車など他メーカーのブランドで販売している車もある。
品質や安全の確認を現場任せにしてきた経営陣の無責任さと、開発の効率を過度に優先する姿勢は許し難い。ダイハツはトヨタの完全子会社であり、トヨタグループではほかにも日野自動車、デンソー、豊田自動織機などで品質を巡る問題が続出している。「現地現物」を掲げ、高い品質と安全性を誇ってきたトヨタだが、その信頼は大きく揺らいでいる。
ダイハツの第三者委員会は新たに174件の不正を確認した。調査報告書では、開発を急ぐあまり、安全を確かめる試験で虚偽のデータを記録したり、エアバッグを不正に加工したりしていた。品質と安全を顧みず、ひたすら納期を守ろうとする生産現場の姿が浮ぶ。
不正が増加したのはこの10年ほどらしい。2016年にトヨタの完全子会社になり、新興国市場向けの軽自動車の開発と生産を担ってきた。トヨタの戦略に組み込まれ、車種供給を広げたことも、現場の負担が重くなった一因ではないか。
ダイハツは軽自動車主体のメーカーとして成長してきた。低価格の軽自動車はコスト削減を徹底しないと利益が生まれない。軽自動車の工場の多くは簡素であり、生産ラインもぎりぎりまで効率化している。品質や安全を確かめる試験に通らなければ、設計や部品の変更を迫られ開発期間は延びる。納期の厳守が利益に直結するだけに、現場では試験を無難にやり過ごしたいと考えたのだろう。
経営陣はこうした現場の気持ちや実情を知ろうとしなかった。営業や開発に押されがちな品質・検査部門の発言力を高める努力も怠っていた。再発防止を考える場合、安全試験への経営陣の関与と、品質・検査担当の増強は欠かせない。開発期間の短縮を無条件で善とする考え方も変えねばならない。
トヨタは毎年、高収益をたたき出している。しかしその内実はずいぶんお粗末だ。グループ企業がここまで無理をしているのを知らなかったのだろうか。うわべだけの現場視察や対話で実情はつかめない。
かつてトヨタには、生産現場の欠点を機敏に見つける練達の社員が数多くいた。グループの工場の改善にも熱心だった。今はどうか。見せかけではない本物の「現地現物」を実践しなければ、トヨタだけでなく日本のものづくりが沈没する。
ダイハツ工業の車は本当に安全なのだろうか。ダイハツは品質・安全の試験などに不正があり、全ての車の出荷を停止すると発表した。国土交通省も立ち入り検査を始めた。品質不正があったのは64車種に及び、トヨタ自動車など他メーカーのブランドで販売している車もある。
品質や安全の確認を現場任せにしてきた経営陣の無責任さと、開発の効率を過度に優先する姿勢は許し難い。ダイハツはトヨタの完全子会社であり、トヨタグループではほかにも日野自動車、デンソー、豊田自動織機などで品質を巡る問題が続出している。「現地現物」を掲げ、高い品質と安全性を誇ってきたトヨタだが、その信頼は大きく揺らいでいる。
ダイハツの第三者委員会は新たに174件の不正を確認した。調査報告書では、開発を急ぐあまり、安全を確かめる試験で虚偽のデータを記録したり、エアバッグを不正に加工したりしていた。品質と安全を顧みず、ひたすら納期を守ろうとする生産現場の姿が浮ぶ。
不正が増加したのはこの10年ほどらしい。2016年にトヨタの完全子会社になり、新興国市場向けの軽自動車の開発と生産を担ってきた。トヨタの戦略に組み込まれ、車種供給を広げたことも、現場の負担が重くなった一因ではないか。
ダイハツは軽自動車主体のメーカーとして成長してきた。低価格の軽自動車はコスト削減を徹底しないと利益が生まれない。軽自動車の工場の多くは簡素であり、生産ラインもぎりぎりまで効率化している。品質や安全を確かめる試験に通らなければ、設計や部品の変更を迫られ開発期間は延びる。納期の厳守が利益に直結するだけに、現場では試験を無難にやり過ごしたいと考えたのだろう。
経営陣はこうした現場の気持ちや実情を知ろうとしなかった。営業や開発に押されがちな品質・検査部門の発言力を高める努力も怠っていた。再発防止を考える場合、安全試験への経営陣の関与と、品質・検査担当の増強は欠かせない。開発期間の短縮を無条件で善とする考え方も変えねばならない。
トヨタは毎年、高収益をたたき出している。しかしその内実はずいぶんお粗末だ。グループ企業がここまで無理をしているのを知らなかったのだろうか。うわべだけの現場視察や対話で実情はつかめない。
かつてトヨタには、生産現場の欠点を機敏に見つける練達の社員が数多くいた。グループの工場の改善にも熱心だった。今はどうか。見せかけではない本物の「現地現物」を実践しなければ、トヨタだけでなく日本のものづくりが沈没する。