来年度予算案
2023年12月27日
◆危うい財政運営に歯止めを◆
財源の確保がおぼつかないのに、歳出は大盤振る舞い―。政府が閣議決定した2024年度予算案の姿である。足りない歳入を国債に頼れば、残高が増し、財政はさらに悪化しかねない。金利が上昇し始めており、危うい財政運営に歯止めをかける時だ。
来年度予算案は一般会計の歳出総額が112兆717億円と、前年度比2・0%減になった。歳出総額が2年連続で110兆円を超える巨額予算だ。財政の膨張傾向が止まらないのは、歳出見直しが進まない一方で、特定の予算で増額がまかり通っている点が大きい。筆頭は防衛費である。
24年度の防衛費は7兆9496億円と過去最大だった前年度から1兆1千億円余り、16・5%の大幅増となった。
27年度までの5年間に計43兆円を投じる防衛力抜本強化の2年目として、反撃能力(敵基地攻撃能力)の手段となる国産長射程ミサイルの取得費などが盛り込まれた。
だが、増額の前提である財源は不透明なままである。法人税や所得税などで1兆円強を増税し充てる方針なのに、その開始時期は来年度の税制改正では先送りされた。この状況で歳出増だけ不問というのは、責任ある政策運営と言えまい。
同じことは拡充する少子化対策にも当てはまる。財源は社会保障の歳出削減と既存予算の活用、支援金制度の創設で賄う計画だが、必要な年3兆円余りが確保できるのは28年度。その一方で来年度からは児童手当の所得制限を撤廃するなど、大盤振る舞いが先行する。
高齢化で社会保障費の抑制は困難になっており、来年度予算案は37兆7193億円と8千億円以上増える。財源確保には危うさがぬぐえず、国債頼みに陥らぬよう監視を強めるべきだ。
24年度の税収は、定額減税を実施するものの大きく落ち込まず、69兆6080億円を見込んだ。それでも歳入は大幅に足りず、国債を新たに34兆9490億円発行。年度末の国債残高は1105兆円に達する見通しだ。これだけでも深刻だが、輪をかけるのが日銀の金融緩和修正に伴う金利上昇である。国債の返済・利払いに回す国債費は来年度に過去最大の27兆90億円を計上した。
10年にわたる異次元緩和は国による借金の負担を軽くし、財政規律を弛緩(しかん)させ、歳出膨張を許した。金利上昇は長年の甘い歳出への警鐘であり、金融政策とともに財政政策も「出口」へ向かうことが求められる。鍵を握るのは歳出歳入両面の抜本見直しだが、それ以上に大事なのが政治のリーダーシップである点は論をまたない。
財源の確保がおぼつかないのに、歳出は大盤振る舞い―。政府が閣議決定した2024年度予算案の姿である。足りない歳入を国債に頼れば、残高が増し、財政はさらに悪化しかねない。金利が上昇し始めており、危うい財政運営に歯止めをかける時だ。
来年度予算案は一般会計の歳出総額が112兆717億円と、前年度比2・0%減になった。歳出総額が2年連続で110兆円を超える巨額予算だ。財政の膨張傾向が止まらないのは、歳出見直しが進まない一方で、特定の予算で増額がまかり通っている点が大きい。筆頭は防衛費である。
24年度の防衛費は7兆9496億円と過去最大だった前年度から1兆1千億円余り、16・5%の大幅増となった。
27年度までの5年間に計43兆円を投じる防衛力抜本強化の2年目として、反撃能力(敵基地攻撃能力)の手段となる国産長射程ミサイルの取得費などが盛り込まれた。
だが、増額の前提である財源は不透明なままである。法人税や所得税などで1兆円強を増税し充てる方針なのに、その開始時期は来年度の税制改正では先送りされた。この状況で歳出増だけ不問というのは、責任ある政策運営と言えまい。
同じことは拡充する少子化対策にも当てはまる。財源は社会保障の歳出削減と既存予算の活用、支援金制度の創設で賄う計画だが、必要な年3兆円余りが確保できるのは28年度。その一方で来年度からは児童手当の所得制限を撤廃するなど、大盤振る舞いが先行する。
高齢化で社会保障費の抑制は困難になっており、来年度予算案は37兆7193億円と8千億円以上増える。財源確保には危うさがぬぐえず、国債頼みに陥らぬよう監視を強めるべきだ。
24年度の税収は、定額減税を実施するものの大きく落ち込まず、69兆6080億円を見込んだ。それでも歳入は大幅に足りず、国債を新たに34兆9490億円発行。年度末の国債残高は1105兆円に達する見通しだ。これだけでも深刻だが、輪をかけるのが日銀の金融緩和修正に伴う金利上昇である。国債の返済・利払いに回す国債費は来年度に過去最大の27兆90億円を計上した。
10年にわたる異次元緩和は国による借金の負担を軽くし、財政規律を弛緩(しかん)させ、歳出膨張を許した。金利上昇は長年の甘い歳出への警鐘であり、金融政策とともに財政政策も「出口」へ向かうことが求められる。鍵を握るのは歳出歳入両面の抜本見直しだが、それ以上に大事なのが政治のリーダーシップである点は論をまたない。