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日航・海保機が衝突

2024年1月4日
◆あり得ない事故 徹底究明を◆

 東京・羽田空港の滑走路で、日本航空の旅客機が着陸時に海上保安庁の航空機と衝突。両機とも炎上した。子ども8人を含む乗客乗員379人を乗せ、新千歳空港から到着した日航機は衝突後、炎と煙に包まれながら1キロほど滑走路を走行して停止。乗客らは全員が脱出シューターを使って機外に避難した。

 海保機は能登半島地震の被災者支援のため食料などの物資を積み、新潟航空基地へ向かおうとしていた。搭乗していた男性6人のうち5人が死亡。自力脱出した機長が重傷を負った。国内の空港で、これほど大きな衝突事故が起きたのは聞いたことがないと専門家らは口をそろえる。通常、あり得ない事故だ。

 滑走路への進入については国土交通省航空局の航空管制官が指示を出し、パイロットは指示の内容を復唱して従う。国交省が公開した交信記録によると、管制は海保機に「滑走路停止位置まで地上走行してください」と滑走路手前の誘導路まで進むよう指示。海保機側もその内容を復唱した。では、なぜ滑走路に入り、事故が起きたのか。徹底した原因究明と再発防止を急ぐことが求められる。

 旅客機の着陸時に、機内では「ボン」と何かにぶつかったような衝撃を感じ、窓の外に炎が見えたと思うと、煙や熱気が充満し始めた。「落ち着いてください」というアナウンスが流れ鼻と口をふさぐよう指示を受けた乗客らは、励まし合いながら脱出シューターへとたどり着いた。この事故を報じた米英のメディアは全員脱出を「奇跡」と伝え、乗員による避難誘導、さらに乗客が荷物を持たずに機外に出たことなどを「お手本のような対応」と称賛している。

 普段の脱出訓練が生き、乗客に犠牲者が出なかったことはせめてもの救いだ。だが、あり得ない事故が起き、海保側に死者が出たのは極めて重く受け止める必要がある。

 管制と日航、海保両機とのやりとりが大きな焦点となる中、海保は脱出した機長が「管制の許可を得て滑走路に進入した」と説明していると明らかにした。機長が指示の内容を聞き違えたのか。

 一方、日航は出発時と航行中に機体に異常はなく、管制からの許可を復唱して着陸操作をしたとしており、両者の主張は食い違いを見せている。

 運輸安全委は航空事故調査官6人を衝突炎上現場に派遣した。警視庁は業務上過失致死傷の疑いで捜査を進めている。

 今回は迅速な避難誘導で日航機側は全員無事だったが、もし燃料タンクが損傷していたなら大きな爆発が起き、大惨事になっていた可能性があることを忘れてはならない。

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