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能登半島地震10日

2024年1月11日
◆災害関連死の予防 最優先に◆

 震度7を記録した能登半島地震の発生から10日が経過した。

 石川県の被災地では懸命の救助が続いている。被災者への飲食料の支援、道路復旧による孤立解消にも全力が注がれている。消防、警察、自衛隊、自治体が主導する救援活動の成果を待ちたい。

 能登では強い余震が続き、雨や雪にも見舞われている。学校の体育館などを活用した避難所で暮らすのは体にこたえる。感染症も心配だ。段ボールを敷いただけの床に雑魚寝する生活を長引かせてはいけない。

 避難所では温かい食事や暖房を提供したい。仮設トイレ、段ボールを活用したベッドや間仕切りによって、少しでも環境を改善してほしい。

 被災者には高齢者も多く、災害関連死を防ぐのは最優先課題の一つだ。

 応援に来ている医療関係者らの助けも借りながら「被害者をこれ以上出さない」を合言葉に、体力と健康の維持に取り組む必要がある。

 輪島市、珠洲市では仮設住宅の設置に向けた動きが始まる。被災者の生活を前に進める重要な一歩となるものの、建設地を選んで仮設住宅を完成させるには、数カ月かかることが多い。

 それまで避難所で待つのは大変だ。まずは各地の自治体が協力して、空いている公営住宅への受け入れを急ぎたい。金沢市などでは民間のアパートやマンションの部屋を行政が仮設住宅として借り上げ、被災者に入居してもらう方法もある。被災者が早く避難所を出られるようにすべきだ。

 今回の地震では、孤立した集落が目立っている。揺れが激しく土砂崩れが各地で起きたのが最大の要因だ。食料や水、燃料などの不足を訴える声も依然強い。当面はヘリコプターや船舶、徒歩による輸送しか手段がない。山間部にも海沿いにも、道が1本しか通っていないような集落がある。とにかく道路の復旧を急いでほしい。

 孤立がもっと広範囲で長期間起きる南海トラフ巨大地震のような大災害が、今後起きるかもしれない。孤立地域への輸送方法をあらためて見直すのは当然だ。家庭や避難所などでの水、食料、生活必需品の備蓄を増やすことも課題になる。

 輪島市など被災市町には各地の自治体から応援の職員が入り、被害把握や罹災(りさい)証明の発行など応急対策を進めている。人口が減少し住民が高齢化している地域での復興計画の策定はかなり難しい。

 それでも、司令塔となる被災市町はできるだけ早く計画に着手してほしい。住民の声を聞いて暮らしや仕事の将来像を描くのに重要だ。

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