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県内経済

2024年1月16日
◆賃上げ、人材確保 試練の年◆

 自粛生活から解放され、初の年越しとなった2024年。コロナ禍で痛んだ経済からどう立ち直るのか、試練の年だともいえる。

 首都圏に比べるとインバウンド(訪日客)の動きはまだ鈍いが、旅行熱の高まりは本県にも波及。23年3月期の決算では、フェニックスリゾート(宮崎市)が売上高を30%超伸ばしたほか、宮交グループ(同)も3年ぶりの営業黒字を達成した。コロナ禍でダメージを受けた観光分野にも回復の兆しがうかがえる。

 一方で、ウクライナ危機や中東情勢の収束は見通せず、燃料費や資材の高騰、人材難など課題は山積する。中でも、今年の2大テーマとなるのは人手不足と賃上げだろう。

 県内50社を対象に宮崎日日新聞が昨年末に行ったアンケートでは、程度の差はあるものの49社が人手不足を実感。過去2回の調査でも43社が「感じている」と回答しており、多くの企業が3年以上にわたり悩んでいることが分かる。今年は、運転手の残業規制が強化される「物流の2024年問題」も拍車をかけそうだ。

 人手不足解消策の一つがDX(デジタルトランスフォーメーション)。場所を選ばず仕事ができる環境の広がりは、地方にとって切り札となる可能性を秘める。デジタル化から一歩先へ踏み出す変革(トランスフォーメーション)への覚悟が問われている。

 物価高に負けない賃上げも欠かせない。国は、長期低迷の象徴だったデフレからの完全脱却を目指す。その成否を握るのが賃上げであり、昨年の春闘では大手企業の平均賃上げ率が3・99%と、約30年ぶりの高水準となった。

 地方の中小企業にとっては高いハードルとなるが、優秀な人材を確保するためにも賃上げは避けて通れない。手元資金を投資へ回し、稼ぐ力を高めることが物価と賃金の好循環を実現させる鍵となる。

 県内では大型案件も動きだす。国富町への進出を決めた電子部品大手ローム(京都市)が、今年中の次世代パワー半導体工場の稼働を目指して準備を進めている。27年度までの設備投資額は過去最高の3千億円超となることが分かっており、景気浮揚への期待は高まっている。

 注視したいのは地元雇用の創出だ。昨年の会見では26年度末までの就業人数が700人になると発表されているが、内訳は示されていない。半導体人材は養成に時間を要するため即戦力を求める向きはあるが、養成込みで地元雇用を優先する姿勢を求めたい。

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