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損保ジャパン処分

2024年1月30日
◆自力での改革 期待できるか◆

 ビッグモーターの保険金不正請求問題で、SOMPOホールディングスと傘下の損害保険ジャパンが、金融庁から業務改善命令を受けた。不正を知りながら、目をそらし続けた損保ジャパンの姿勢はあきれるばかりだ。

 損保ジャパンが営業偏重を指弾されるのはこれが初めてではない。透明性の高い企業統治や法令順守の徹底。企業として当たり前のことを何度誓えば実行できるのか。

 トップが引責辞任しても、前身の旧安田火災海上保険出身の生え抜きが後任に座る。同じ風土で育った金太郎あめのような人材に改革を期待できるのか。ビッグモーターに絡む問題は節目を迎えたが、外部から信頼できる経営者を招く覚悟すら示そうとしない。不信と疑念は消えようがない。

 同庁は改善命令の中で、「顧客の利益より自社の利益を優先する企業文化」の改革と経営責任の明確化を迫った。

 SOMPOの桜田謙悟会長は3月末にすべての役職から退く。経済同友会の代表幹事を4年間務めた桜田氏は財界リーダーの一人として、多くの企業に社会的責任の自覚を求める立場だった。足元で起きた不祥事はお粗末としか言いようがない。

 2006年に損保ジャパンは、保険金不払い問題で一部業務停止命令を受けた。多くの生損保各社が処分されたが、損保ジャパンは悪質とされた会社の一つだ。当時の社長が代理店に過大なノルマを課し、自ら電子メールで達成を求めたことが、問題の背景にあった。

 経営者の姿勢が不正を助長したのは今回も同じだ。ビッグモーターの不正を知って損保各社は取引を停止したが、損保ジャパンの社長は自ら再開を主導していた。18年前の過ちから何も変わっていない。

 企業風土と法令順守に深刻な問題があるSOMPOや損保ジャパンへの処分を、業務改善命令にとどめたのは妥当なのだろうか。ビッグモーターのような大口取引先を担当する部門や営業社員の業務を一時停止してもいいはずだ。

 通り一遍の研修や教育だけで再発は防止できない。かつて「金融処分庁」とも言われた厳しい姿勢は最近の金融庁からは感じられない。政治家から「金融育成庁」への変身を求められ処分が甘くなっていないか。金融システムや保険契約者を守るには、たとえ巨大企業が相手でもひるむことは許されない。

 営業部門はもちろん、法務、内部監査も当てにならず、経営陣すら法令順守に背を向けていた。これが第三者委員会の調査や金融庁の検査で浮かび上がった損保ジャパンの姿だ。実態を直視し、手を打つべきだ。

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