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能登半島地震1カ月

2024年2月1日
◆創造的復興へ議論始めよう◆

 能登半島地震が発生して1カ月。約240人が亡くなり、石川県だけで約4万5千棟の住宅が被害を受けた。被災した市町が開設した避難所に身を寄せる人は最多の約3万4千人から減って1万人を切っている。一方で、断水は4万戸以上で続き、道路の復旧もまだ時間がかかりそうだ。

 仮設住宅は一部が完成した。急ピッチの整備が望まれる。避難所生活に伴う災害関連死を防ぐため、できるだけ早くホテルや旅館へ移る2次避難や、仮設住宅や民間の借り上げ住宅(みなし仮設)などへの入居が肝要だ。孤立を避けるため家族やコミュニティーといったつながりを大切にして一緒に移るよう配慮を続けてほしい。

 被災地では水道供給の再開にも一定のめどが立ってきた。がれき処理などに当たるボランティアの受け入れも始まり、倒壊家屋の本格的な解体・撤去の開始も間もなくだ。復興の議論をスタートできる環境になった。まず国や被災した石川県や市町が、どんな手順で復旧、復興するのか、その流れを示すことが大事だ。東日本大震災などの経験に基づき何年でどうなるのかは想像できる。目標とするスケジュールをまず見せてほしい。

 それは県外に避難している人が古里に戻るタイミングを計るヒントになる。被災者が自分の生活をやり直すために必要な目安、将来を想像するよすがになるはずだ。

 被災した人は、それぞれ将来への思いや悩みを抱えている。復興に向け一人一人に被災や生活の状況、展望などを丁寧に聞き取る。時間の経過とともに考え方も変わるので、定期的な実施が必須である。

 集約した意見をベースに、住民参加してまちの復興策を何度も話し合う。協力できる実感があるからこそ、一緒にやっていこうと次に踏み出せるだろう。

 能登半島の復興には、被災市町だけでなく、半島全体の将来像も視野に入れることが不可欠だ。阪神大震災や東日本大震災、熊本地震などの後に「復興基金」がつくられている。

 被災者の見守りや心のケアなど行政だけではできない活動も含め支援してきた。基金を創設し、地域の未来の姿を描く組織も立ち上げたい。

 行政、被災地で活動してきたNPOや学識者に加え、漁業や観光業などなりわいに関わる地元の人らにも参加を求め、多様な視点から長期的に活性化策を探るのである。

 元に戻すだけでは不十分だ。新たな能登を築くという創造的復興のための知恵を集める。ここでの復興を、同様に人口減少下で起きる大災害を乗り越える手本にしなければならない。

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