ホーム 社説

裏金巡る予算委論戦

2024年2月9日
◆リーダーシップ欠如が明白◆

 2024年度予算案の本格審議が衆院予算委員会で始まった。岸田文雄首相は自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関連し、政党が議員に支出し「裏金の温床」と批判される政策活動費の改革などに終始後ろ向きだ。

 「国民の疑念を招いたのは極めて遺憾。自民党は変わらなければならない」と施政方針演説で表明したのは首相自身だ。政治資金規正法改正を「今国会で実現する」とは言った。だが野党のみならず与党公明党までもが求めた、議員の責任を強化する連座制導入は「丁寧な議論が必要だ」と受け流し、改正の具体論への言及を避け続けた。

 自民党はどういう方針で臨むのか。それを党総裁の首相が明示しない限り議論は前へ進まない。ところが首相は各党協議へげたを預け、終始逃げてばかりだ。野党や世論が根負けして批判の嵐が去るのを待つ持久戦術だとさえ思いたくなる。踏み込んだ改革を表明して自民党内で反発されることを避けたい内向きの意図だとすれば、深刻な国民不在の政治姿勢だと言わざるを得ない。

 立憲民主党の岡田克也幹事長は、自民党の浜田靖一国対委員長が検討を表明した安倍、二階両派幹部の政治倫理審査会への出席を重ねて要求。だが首相は「説明責任を果たす手段は国会関係者が判断しなければならない」とするのみで言葉を濁す。リーダーシップ欠如は目を覆うばかりだ。

 政策活動費を巡っては、岡田氏が「領収書が要らず巨額の合法的な裏金だ。公明党も含め廃止や使途公開をしようということで共通している」と自民党に賛同を求めた。ところが首相は「使途を明らかにすると政治活動に影響が出る。企業や個人のプライバシー、営業秘密を守る観点は重要」と消極姿勢。いかに正当な活動に支出したとしても、説明できなければ後ろめたい使途と思われる。正当性に自信があれば公開すべきだ。

 裏金を使い切らず保管していた場合は、個人所得として税務申告する必要があり、怠れば脱税に当たるとも立民は追及。これも首相は「党として実態把握に努める」の連発だった。間もなく確定申告だ。政治家だけ非課税の裏金天国では納税者は到底納得できまい。

 自民党は党所属の全国会議員へのアンケートを始めた。ただ質問は(1)派閥パーティーに関して政治資金収支報告書に収入の記載漏れがあるか(2)あった場合は2018年から5年間の不記載額―の2問のみ。記載漏れの理由や金の使途は不問だ。自己申告に頼る安易な調査では到底、実態把握できないのは明らかだ。

このほかの記事

過去の記事(月別)