株価最高値
2024年2月28日
◆企業優先のゆがみ映し出す◆
東京株式市場の日経平均株価(225種)が、バブル経済期につけた史上最高値を上回った。これまでの終値最高値は1989年末の3万8915円だったが、22日に約34年ぶりに記録を更新した。
株高の象徴する好景気を実感している国民がどれだけいるだろうか。生活感覚とかけ離れた株高は、企業優先の政策のゆがみを映している。
今回は複数の要因を指摘できる。まず新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化だ。
次に円安だ。インフレ退治へ米欧が金融を引き締める一方、日銀は緩和を続け、金利差拡大から足元では1ドル=150円近辺へ下落。自動車など輸出企業の利益が膨らみ、株価を押し上げた。ただ為替差益は一時的な面があり、企業の「稼ぐ力」の向上とは必ずしも言えない。
加えて円安でドル換算した株価が割安になり、海外投資家が日本株に手を伸ばしやすくなった点がある。企業が自社株買いや配当の株主還元を拡充した動きと相乗効果を生み、海外勢の積極的な買いを呼んだ。
株売買の約6割は海外投資家が占め、保有は3割に達する。影響力は大きく、利益確保へ日本株を手放した際などには値下がりが予想される。海外投資家の動向に左右されやすい市場構造を忘れないようにすべきだ。
ほかの株高要因としては、少額投資非課税制度(NISA)が刷新され個人投資家の資金が市場へ流入した点や、米国経済の堅調、半導体需要への期待が指摘される。しかし肝心なのは、経済活動の実態を伴っているかどうかであろう。
景気の柱である個人消費を見れば不振は鮮明だ。実質国内総生産(GDP)の消費は、昨年10~12月期まで3四半期連続で前期比減。2%目標を超える物価高でも日銀が緩和をやめない影響などで、インフレに賃上げの追い付かない状態が続くのだから当然だ。GDP全体では2期連続減に沈んだ。こうした景気実体とちぐはぐな株高は、手じまいできない大規模緩和と円安をはじめとする政策のゆがみ、企業姿勢に求められる。
企業利益や株主還元が拡大してきた背景には法人税減税などの優遇策がある一方で、家計には消費税や社会保障の負担増、そして物価高騰と重荷ばかりがのしかかる。海外投資家などを恐れて企業が株主還元に前のめりな半面、賃上げには長年後ろ向きだった点も忘れてはならない。今春闘では従来以上の賃上げとして還元を求めたい。
株価高騰に反比例するように岸田政権の支持率は低迷する。政治資金問題だけでなく、国民生活の痛みへの無頓着が根底にあると知るべきだ。
東京株式市場の日経平均株価(225種)が、バブル経済期につけた史上最高値を上回った。これまでの終値最高値は1989年末の3万8915円だったが、22日に約34年ぶりに記録を更新した。
株高の象徴する好景気を実感している国民がどれだけいるだろうか。生活感覚とかけ離れた株高は、企業優先の政策のゆがみを映している。
今回は複数の要因を指摘できる。まず新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化だ。
次に円安だ。インフレ退治へ米欧が金融を引き締める一方、日銀は緩和を続け、金利差拡大から足元では1ドル=150円近辺へ下落。自動車など輸出企業の利益が膨らみ、株価を押し上げた。ただ為替差益は一時的な面があり、企業の「稼ぐ力」の向上とは必ずしも言えない。
加えて円安でドル換算した株価が割安になり、海外投資家が日本株に手を伸ばしやすくなった点がある。企業が自社株買いや配当の株主還元を拡充した動きと相乗効果を生み、海外勢の積極的な買いを呼んだ。
株売買の約6割は海外投資家が占め、保有は3割に達する。影響力は大きく、利益確保へ日本株を手放した際などには値下がりが予想される。海外投資家の動向に左右されやすい市場構造を忘れないようにすべきだ。
ほかの株高要因としては、少額投資非課税制度(NISA)が刷新され個人投資家の資金が市場へ流入した点や、米国経済の堅調、半導体需要への期待が指摘される。しかし肝心なのは、経済活動の実態を伴っているかどうかであろう。
景気の柱である個人消費を見れば不振は鮮明だ。実質国内総生産(GDP)の消費は、昨年10~12月期まで3四半期連続で前期比減。2%目標を超える物価高でも日銀が緩和をやめない影響などで、インフレに賃上げの追い付かない状態が続くのだから当然だ。GDP全体では2期連続減に沈んだ。こうした景気実体とちぐはぐな株高は、手じまいできない大規模緩和と円安をはじめとする政策のゆがみ、企業姿勢に求められる。
企業利益や株主還元が拡大してきた背景には法人税減税などの優遇策がある一方で、家計には消費税や社会保障の負担増、そして物価高騰と重荷ばかりがのしかかる。海外投資家などを恐れて企業が株主還元に前のめりな半面、賃上げには長年後ろ向きだった点も忘れてはならない。今春闘では従来以上の賃上げとして還元を求めたい。
株価高騰に反比例するように岸田政権の支持率は低迷する。政治資金問題だけでなく、国民生活の痛みへの無頓着が根底にあると知るべきだ。