首相の政倫審出席
2024年3月1日
◆踏み込んだ見解語らず失望◆
岸田文雄首相が衆院政治倫理審査会に出席した。疑惑が持たれた議員が説明責任を果たす場として設置されている政倫審で現職首相が初めて弁明した意味は極めて重い。
だが、最大の焦点である安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金事件については、党執行部による関係議員からの聞き取り調査に立ち会った弁護士の報告書をなぞるだけに終わった。誰がいつから何のために組織的な裏金づくりを始めたのか、派閥の幹部たちは違法行為を知りながらなぜ黙認したのか、裏金を受けた個々の議員は何に使ったのかといった核心部分を報告書は全く解明していない。党の調査に限界があるのは明らかだ。
今回、首相は「自民党総裁として」政倫審出席を決断したという。ならば、真相に迫るために第三者機関に調査を委ね、聞き取りの対象を広げ、歴代幹部を集中的に聴取すべきだ。そして議員一人一人の使途をより詳細に説明させるなど別の方法を考えなければならないだろう。
とりわけ、20年以上前から始まっていた可能性を指摘されたのだから安倍派の前身、森派で会長を務めた森喜朗元首相のヒアリングは不可欠だ。それを言下に否定するのであれば、事実関係の解明に後ろ向きと批判されても仕方あるまい。
もう一つ、首相には自身に関わる問題がある。大規模なパーティーの自粛を求めた大臣規範がありながら就任後の2022年に7回にわたりパーティーを開催。21年分も含め計約1億5510万円の収入を得ている。
さらに、首相就任を祝う会を主催した任意団体が収益の一部とみられるカネを首相の関連政治団体に寄付していた問題も表面化。首相は「地元政財界が発起人となり、政治団体とは異なる任意団体が開催した純粋な祝賀会」と釈明するが、参加者に宛てた文書は問い合わせ先に岸田事務所の連絡先を記載していたことから、野党は「脱法行為だ」と批判する。
自民党が変わらなければならない、自らはその先頭に立つと言うならば、後者の任意団体によるパーティーも「好ましくない」ときっぱり宣言すべきではないのか。そうでなければ、派閥のパーティーを禁止しても、あの手この手で抜け道を探してカネ集めをする風潮は止められないだろう。
岸田首相は何のために政倫審に出席したのか。公開の場での弁明に難色を示す安倍派幹部の背中を押すだけが目的だとすれば、国民に見透かされる。政治の信頼回復へ勝負に出たつもりかもしれないが、せっかくの機会に踏み込んだ見解を語らなかった首相に、失望感が広がるのは避けられそうにない。
岸田文雄首相が衆院政治倫理審査会に出席した。疑惑が持たれた議員が説明責任を果たす場として設置されている政倫審で現職首相が初めて弁明した意味は極めて重い。
だが、最大の焦点である安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金事件については、党執行部による関係議員からの聞き取り調査に立ち会った弁護士の報告書をなぞるだけに終わった。誰がいつから何のために組織的な裏金づくりを始めたのか、派閥の幹部たちは違法行為を知りながらなぜ黙認したのか、裏金を受けた個々の議員は何に使ったのかといった核心部分を報告書は全く解明していない。党の調査に限界があるのは明らかだ。
今回、首相は「自民党総裁として」政倫審出席を決断したという。ならば、真相に迫るために第三者機関に調査を委ね、聞き取りの対象を広げ、歴代幹部を集中的に聴取すべきだ。そして議員一人一人の使途をより詳細に説明させるなど別の方法を考えなければならないだろう。
とりわけ、20年以上前から始まっていた可能性を指摘されたのだから安倍派の前身、森派で会長を務めた森喜朗元首相のヒアリングは不可欠だ。それを言下に否定するのであれば、事実関係の解明に後ろ向きと批判されても仕方あるまい。
もう一つ、首相には自身に関わる問題がある。大規模なパーティーの自粛を求めた大臣規範がありながら就任後の2022年に7回にわたりパーティーを開催。21年分も含め計約1億5510万円の収入を得ている。
さらに、首相就任を祝う会を主催した任意団体が収益の一部とみられるカネを首相の関連政治団体に寄付していた問題も表面化。首相は「地元政財界が発起人となり、政治団体とは異なる任意団体が開催した純粋な祝賀会」と釈明するが、参加者に宛てた文書は問い合わせ先に岸田事務所の連絡先を記載していたことから、野党は「脱法行為だ」と批判する。
自民党が変わらなければならない、自らはその先頭に立つと言うならば、後者の任意団体によるパーティーも「好ましくない」ときっぱり宣言すべきではないのか。そうでなければ、派閥のパーティーを禁止しても、あの手この手で抜け道を探してカネ集めをする風潮は止められないだろう。
岸田首相は何のために政倫審に出席したのか。公開の場での弁明に難色を示す安倍派幹部の背中を押すだけが目的だとすれば、国民に見透かされる。政治の信頼回復へ勝負に出たつもりかもしれないが、せっかくの機会に踏み込んだ見解を語らなかった首相に、失望感が広がるのは避けられそうにない。