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福島原発事故13年

2024年3月9日
◆低コストと分散型の政策へ◆

 いまだに被災者に大きな影響を与え続けている東京電力第1原発事故から13年になる。この間に大きく動いた世界のエネルギー事情を見つめ、原発が抱えるリスクを改めて心に刻む日としたい。目指すべきは、高コスト、高リスクの大規模集中型電源から、しなやかで低コストの再生可能エネルギーを主とする分散型システムへの転換だ。

 この間を特徴付ける一つは化石燃料依存のリスクが鮮明になったことだ。石炭などからの二酸化炭素(CO2)がもたらす気候危機は「地球沸騰時代」と言われるまでに深刻化した。ウクライナ侵攻の影響で化石燃料価格は急騰、エネルギー関連の輸入額は三十数兆円に上り、多くの企業や市民が高騰の影響を受けている。一刻も早い脱炭素電源の実現が求められる。

 もう一つの特徴は急速に価格が低下している太陽光や風力発電の急拡大と発電コストや建設費の増大が招いた原子力発電の停滞だ。国際シンクタンクの調査によれば、原発の電力が世界の総発電量に占める比率は1996年の17・5%をピークに減少し、2022年には9・2%で過去40年間で最低だった。

 多くの国が低コスト、低リスクで、導入までの時間が短い再生可能エネルギーを増やし、変動する電源を安定的に利用する技術や政策の実現を急いでいるのは当然だ。だが、自公政権のエネルギー政策はこの流れに逆行してきた。

 岸田文雄首相は気候変動対策としての原発推進を打ち出した。だが、気候危機対策では短期間に大幅なCO2排出削減が求められ、「今後10年が気候危機の将来を左右する」といわれる。新設はもちろん再稼働にも長期間を要する原発を重視する気候危機対策は非合理的だ。

 1基で100万キロワットを超える大規模な電源が自然災害によって一瞬にして失われることの影響の大きさを原発事故は教えた。能登半島地震で北陸電力志賀原発の再稼働の見通しがまったく立たなくなったことからも、原発が電力の安定供給に貢献するとの言説も疑わしい。資金や人材の多くを原発や不確実な将来の新技術に投じたため、日本国内の再エネ市場は、他国に比べて見劣りする結果となった。

 政府は間もなく、エネルギー基本計画の見直しに着手する。後れを取った日本のエネルギー政策を根本から見直す最後のチャンスと言える。そのためには、経済産業省が指名した委員による委員会で、役所のシナリオに沿って政策を決めるという非民主的な手法を見直し、科学とデータに基づき、多くの市民や専門家の意見を聞きながら民主的な政策議論を進める「政策決定手法の大転換」も重要だ。

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