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日銀国債買い入れ

2024年6月15日
◆正常化へ整然と減額進めよ◆
 異次元緩和は役割を終えたと判断したのだから、金融政策の正常化を遅滞なく整然と進めねばならない。日銀が、長期金利抑制のため実施してきた国債買い入れの減額方針を決めたのは当然だ。一方で、大規模金融緩和の終結後も政策金利は極めて低く、円安と物価高の再燃を招いている。悪影響を抑えるため適切に見直すべきだろう。
 日銀は3月、「賃金と物価の好循環」で2%物価目標の実現が見通せる状況になったとして、長年続けた大規模緩和を終了。短期金利をマイナス、長期金利は0%程度に低く抑える「長短金利操作」を撤廃した。
 その際、急激な金利の変動を避けるため、長期国債の購入をそれまでと同じく「月6兆円程度」で続けると表明した。日銀は14日、この国債購入の減額方針を決定した。一方で政策金利である短期金利は、0~0・1%程度とする誘導目標を据え置いた。
 長期国債は長期金利の指標になっており、日銀が購入を減らすと金利は上昇する。このため今回の決定は、利上げと同効果のある「量的金融引き締め」と位置づけられる。企業の借り入れや住宅ローンの金利が上がる半面、保険商品などでは利率アップが見込めよう。
 異次元緩和を手じまいしながら植田総裁は4月、円安の物価への悪影響は限定的と明言。米国の金利高止まりと相まって、円は一時1ドル=160円近辺まで売られた。物価高が再燃し賃上げに水を差しかねない事態となったことで、政府は9兆円超の円買い為替介入を余儀なくされた。
 このため今回の日銀決定には、円安圧力を緩和する狙いもあったと見るべきだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が12日、政策金利の維持を決め、ドル高基調の長期化が見込まれる点も判断の背景にはあろう。
 足元では円安に焦点が当たっているが、本質的には財政運営が日銀の国債購入に支えられている構図の解消が急務だ。
 異次元緩和による大量購入の結果、日銀の国債保有は約600兆円と発行残高の半分を超え、国債購入のもたらした超低金利がばらまき財政を常態にした。政府が怠ってきた財政健全化を進めるためにも、金利の着実な正常化が欠かせない。
 この低金利が円安と物価高を誘発し、賃上げが追い付かない窮状の長期化につながっている。家計の節約志向が強まれば今月始まった定額減税の効果も打ち消されよう。
 植田総裁は異次元緩和の転換後は「普通の金融政策を行う」と強調した。政策運営の不明瞭さを払拭(ふっしょく)し、その言葉を証明してもらいたい。

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