【コラム】育てよう「世界の宝」
2010.02.16付
スーパールーキー雄星(菊池雄星)フィーバーに沸く埼玉西武ライオンズがキャンプを張る日南市南郷町の南郷スタジアムに行ってきました。球団広報によると、1日平均約80人の報道陣が受け付けをし、球場そばの売店によると、週末は午前中で売り切れになる商品がある、ということです。売店の女性は「今は南郷には車が多いのよ」と笑いながら話していました。その人気は、かつて甲子園が生んだスターの荒木大輔さん(早実出身)や清原和博、桑田真澄さんのKKコンビ(PL学園出身)、松坂大輔投手(レッドソックス)に負けるとも劣らないほどです。取材したのが平日にも関わらず、駐車場は名古屋や熊本ナンバーなど県外車が目立ちました。移動時には報道陣やファンが一群となるため、どこにいるのか一目で分かります。「気疲れしないか」老婆心ながら心配になります。たくさんのファンの期待を集めるのがスターならば、まぎれもなくその資質があります。この日はピッチングをしませんでしたが、投球練習場の周りには、いつ投げるのか気をもみながら待つ幼児から高齢者まで幅広いファンで二重、三重の人垣ができました。地元保育園児から「雄星君、頑張って」とかわいらしい声援を受けると、手を振って応える姿も見られました。
雄星の魅力の一つは、これほど騒がれながら冷静に自らを分析できる点でしょう。米・大リーグ入りを断念した際は「活躍できるレベルではない。すべての面でレベルアップしないと」。ドラフト後には「野球だけでなく、取り組む姿勢、考え方まですべてがプロでないといけない」などこれまでの発言を振り返っても、浮かれたところはなく、常に自分の言葉で語っています。それは「言葉にはエネルギーがあるし、どんな言葉を発したかで人生はつくられると思う」との考えが基本となっているのでしょう。
ただ、やはり高校卒業を控えた18歳です。顔や言葉に出なくても大きな環境の変化に戸惑いがない、ということはないでしょう。高校生で150キロ以上の伸びのあるストレートや切れ味鋭いスライダーが投げられるのは類まれな才能で、順調に成長すれば、球団の先輩である松坂投手と同じように日本、いや世界の球界を背負って立つ選手にも成りえるでしょう。キャンプでは「いろんなことを吸収したい」と事前に語っています。この「世界の宝」をファンもマスコミも大切に育てたいものです。
会場はメインとサブ球場に分かれており、雄星がどちらにいるかは会場内に掲示してあるメニューで分かりますので、確認することをお勧めします。(達也)
【写真】多くのファンや報道陣の注目を集める雄星