70年ぶりに選挙権年齢が引き下げられ、18歳から投票できるようになった来年7月の参院選の任期満了まで25日で1年を切った。若者たちは低投票率が続くなど政治離れが叫ばれて久しいが、新しい政治の形を探ろうと模索してもいる。本県の“わけもん”はどのような1票を投じるのか。参院選まで追い続ける。
本県は広がり欠ける
「戦争したくなくて震える」「Tell me what democracy looks like(民主主義って何だ)」
24日夜、東京・永田町の国会前で開かれた安全保障関連法案に反対するデモ。ダンスを楽しむクラブのような音楽が流れ、若者が叫ぶと、歩道を埋め尽くした賛同者たちが体をゆらしながら歓声を送った。
中心となるグループ「SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)」は、主に首都圏の10代から20代前半の学生。代表者はつくらず、約180人のメンバーが無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡を取り合う。
デモの回数を重ねるごとに、参加者が自然発生的に膨らみ続けている。支持政党の有無も関係ない。足を運んだことがある、えびの市出身の共産党都議、米倉春奈(27)は「世代や宗教など背景の違う人々が一堂に集まっている。このような動きは見たことがない」と印象を語る。
□ □
「前身の団体の時も、特定秘密保護法案への抗議活動をしたが、一般の人がここまで来てくれるのは初めて」。シールズで広報を担当する日本大芸術学部3年、今村幸子(21)は話す。「批判されても自分の考えを信じて行動してきた。潮目が変わってきたように感じてうれしい」
首都圏のメンバーに本県出身者はいないが、シールズは東北や関西などでも立ち上がるなど、ネットを見て人々が気軽に集い、意見を述べる新しいデモの形は全国に広がっている。
□ □
安保法案の抗議活動は本県でも、若者ら約40人が宮崎市で20日にアピールウオークをするなどの動きがあるものの、大規模な集会には至っていない。
宮崎大の女子学生(20)は匿名性の高い都会と比べて、特別視されることが気になる。「話題を出しても友人たちから『意識高い系』と変な目で見られる。ばかにされたり、敬遠されたりしてまで行動する勇気はない」
都城市の男子大学生(24)は「近隣国が軍事費を増大させている状況が怖い。集団的自衛権という大きな保険がほしい」と法案に賛成し、「原発再稼働問題がある鹿児島県などに比べ、政治的に盛り上がる要素が少ないのでは」と冷ややかに受け止める。
都会を中心とした若者たちの抗議活動を横目に、政府・与党は法案成立に向けて歩みを進める。衆院は与党が強行採決して可決。参院で議決されない場合に衆院の3分の2以上の賛成で再可決・成立させる「60日ルール」も念頭に今国会での成立を狙う。
シールズの今村は力を込める。「デモをしていると友達から距離を置かれる怖さもあるけど、やらないといけない。戦争で人が死ぬ恐れもあるのに見て見ぬふりはできない」
(敬称略)
【第1部・潮流】(上)ネット通じ全国でデモ | 2015年07月26日付 |
【第1部・潮流】(中)議員インターンシップ | 2015年07月27日付 |
【第1部・潮流】(下)意見交換 | 2015年07月28日付 |
【第1部・潮流】(番外編)熱い思い、届けたい | 2015年07月28日付 |