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わけもんの一票
【第5部・いよいよ本番】(2)実践
06月18日付
立会人に希望者多数

 18歳で有権者になる実感をより持ってもらおうと、参院選を前に延岡市選挙管理委員会は、高校生からも投票所の運営に関わる事務従事者や立会人を募った。希望者が多かったが、寮生活で住民票が別の市町村にあり、公職選挙法の決まりでやりたい役目がかなわない生徒も。「住民票問題」を通して、改めて選挙権を考える機会になっているようだ。

 15日、延岡高(段正一郎校長)。延岡市選管の職員が、投票所で事務従事者や公正に行われているかチェックする立会人を務める3年生16人に約1時間説明した。

 「立会人が2人とも席を離れている時の投票は無効」「期日前で済ませた投票を投票日もすると無効」。さまざまなルールを学んだメディカルサイエンス科3年の久保田匠眸(なるむ)さん(17)は「今は期待より不安が勝ってるかも」と、当日を楽しみにしながらも苦笑いする。

 市選管は2001年に大学生らの選挙啓発グループ「ミニ選挙管理委員会」を立ち上げて総務大臣表彰を受けるなど、全国でも早く若者向けの活動に力を入れてきた。

 「間近で選挙の様子を見ることで自覚や気づきが生まれる」と、事務従事者などは大学生からも募集してきたが、今回初めて市内の全7高校にも呼び掛けた。参加希望者は46人に上り、「予想以上に多くて驚いた」と、市選管の甲斐哲生事務局長。

 しかし、生徒や投票所の負担軽減のため1投票所に高校生は1人までとしたのに加え、公選法には「立会人は投票所管内に住民票がある有権者」と規定。参加できるのは4校の31人となった。

 久保田さんは18歳の誕生日を迎えるので有権者の条件はクリアするものの、寮生活で住民票は実家の高千穂町。当初希望した立会人はできずに事務従事者をすることになった。延岡高の石川展(まこと)・主幹教諭は「私も生徒も住民票の大切さを知るいい経験になった」と前向きに受け止める。

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 県内の県立高校の通学区域が08年度撤廃され、市町村を越えて在籍する生徒が生まれた。参院選の宮崎選挙区(改選数1)のエリアは全県なので県内に住民票があれば投票できる。でも市町村の首長・議員選では、その市町村内にないと投票できず、「住民票問題」が表面化する可能性がある。

 住民票は現住所に移すのが原則。ただ高校を卒業後に県外に転出する際、そのままにしておく若者も少なくない。県学校政策課によると、高校の卒業生は例年約1万人。うち就職する約3千人の半数、大学に進学する約4千人の約7割は県外に転出する。

 離れた地にいれば郵送による不在者投票もできる。県選管の濵川哲一副主幹は「記念すべき人生初の選挙。権利を失うのはもったいない」と若者の1票の行方を見守る。
[写真]延岡市選挙管理委員会の職員(右)の投票事務や立会人の説明を真剣に聞く延岡高の生徒たち=15日午後、延岡市・延岡高