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わけもんの一票
【第5部・いよいよ本番】(4)特別支援学校
06月21日付
理解度に差 対応模索

 主権者意識の醸成は県内13の特別支援学校でも広がっている。うち知的障害の生徒はそれぞれ理解度に差があり、各校が対応を模索している。

 都城市の都城きりしま支援学校(酒井裕市校長)は2月、生徒会役員選挙を参院選などの公職選挙に近い形で行った。市選挙管理委員会から借りた機材を本番通りに配置。中学、高等部の136人が参加し、交付機からの投票用紙を受け取って記載台で候補者名を書き、投票箱に入れた。

 投票用紙も一新。それまでは候補者名と顔写真付きのA4判で、支持する生徒名の下に丸を付けていたが、実物大へ変更し、候補者名は記入式にして顔写真は省いた。教諭が付き添うのもやめた。

 多くが順調にできて「政治を勉強したい」と意気込んだ生徒も。担当した渡部雄太教諭は「投票の流れや雰囲気をつかめ、選挙権を得たことを実感できたのではないか」。一方で投票に30分近くかかった生徒もいた。

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 社会的弱者もさまざまな手段で選挙権を行使できる。自筆できないときの「代理投票」や目が不自由な人のための「点字投票」。移動が困難な高齢者らが事前申請により認められる郵便などによる「不在者投票」など。

 ただ不安材料も抱える。例えば、代理投票。有権者は投票所で申請すると、会場の係員から選ばれた2人の投票補助者が付けられる。1人は有権者が指示する候補者名などを記入し、もう1人は不正がないか見守る制度だが、教諭からはこんな声が聞かれる。

 「中立性の確保から保護者は記載台に近づけない。初対面の人に意思表示できるのか」「記載台には候補者や政党名しか表記されない。写真でしか覚えられない生徒はどうするのか」

 知的障害者の家族らでつくる「県手をつなぐ育成会」の大上彰弘会長(69)は「食べたいお菓子を選ぶことすら意思表示が難しい人もいる。候補者の訴えを比べて投票できるのはほんの一握りだろう」と推測する。身体障害者手帳1級と療育手帳Aを持つ長男(40)は、これまで1度も投票できていないという。

 宮崎市のみなみのかぜ支援学校(橋本昭彦校長)は1月、卒業生を対象に選挙の関心度を調べた。その結果、20、21歳の15人中4人が投票経験があり、18、19歳の11人中10人が選挙権年齢の引き下げを知っており、注目の高さがうかがえた。

 今月末には選挙の目的や投票手順をかみ砕いて説明する授業を予定する。担当の藤原修也教諭は「選挙について学ぶことは自分の将来を考えることに直結する。今後も主権者教育を続け、生徒の自立や社会参加につなげたい」と話す。
[写真]授業で使う資料を作成する藤原教諭(右)ら。分かりやすい表現を心掛けている=宮崎市のみなみのかぜ支援学校