ピンクの鉢巻きとジャケット、膝上30センチの短パンでポーズを決めるスーパーアイドル日野さん
アイドルとして東京で活躍する夢はかなわなかった。それでも活躍の場を求めて故郷へ帰り、ステージに立つ中年男性がいる。“スーパーアイドル”こと宮崎市恒久の日野誠さん(42)。膝上30センチの短パンにローラースケートを履く独特の衣装で県内のイベントやテレビ番組に出演している。「宮崎の明るさを伝えられる存在になりたい」と、ご当地アイドル戦線に名乗りを上げる。
中学2年のとき、アイドルグループ「光GENJI」に憧れた。高校卒業後に上京し、タレント萩本欽一さんが主宰する「欽ちゃん劇団」に入団。2年で退団した後も「少しでも夢に近づけるなら」と、吉本興業のお笑い芸人養成所「東京NSC」に入学した。
今のスタイルを固めたのは20代半ば。女性らしいしぐさや話し方でからかわれ続けた個性と向き合い「恥ずかしくて表に出せなかった“オネエ”っぽさ武器にしよう」と決意。光GENJIの諸星和己さんのイメージカラー・ピンクの服を着用するようにした。
29歳のとき、テレビ番組出演がきっかけで念願のCDデビューを果たしたが、番組が終了した35歳ころから下火に。オーディションを何十回も受けたが「年齢的に使いづらい」「オネエか芸人か、キャラクターが中途半端」などと落とされ続けた。
その間、サラリーマンになった同世代は、働き盛りを迎え活躍。その姿に「焦りがないと言えばうそだけれど、これが自分の道。やり切るしかない」と自分流をしゃかりきに貫いた。
昨年12月に帰郷し、今は市内の映像製作会社に所属、地元のテレビやラジオ番組に出演する。イベントでライブを行うこともあるが、大半はノーギャラ。市内のライブスタジオやパブで舞台に立ち、生計を立てている。
芸人と間違われることもあるが、本人はあくまでスーパーアイドルと自称する。入浴後は化粧水と乳液で肌のケアを欠かさない。「いくつになっても心は“ガラスの10代”。あきらめない限り夢は止まらない」。日野さんは今日もローラースケートで回り続ける。