フジテレビ記者会見に出席した港浩一フジテレビ社長
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フジテレビは中居正広氏の女性トラブルに同局員の関与を指摘する一連の問題を受け、27日午後4時から2度目の記者会見を開いた。批判を招いた1度目の会見の教訓を生かす形での会見だったが、質疑応答では1問目から怒号が飛び交い、終了したのは日付が変わった午前2時半前。“大荒れ”と表現しても差し支えないほどの会見場にいた一人として、現場での出来事を振り返りたい。
【写真】奥まで人が溢れてる…フジテレビ記者会見会場の模様
2度目の会見では、参加メディアを限定せずに各媒体4人程度を受け入れ、テレビカメラの参加も許可。10分間のディレイをつけてTVer(ティーバー)やFNNプライムオンラインでも配信。この日、参加メディアの受付開始時刻は午後2時だったものの、受付開始前から数百人が本社前に集まった。午後2時すぎから受付が開始されたものの、入館前には厳重な手荷物検査も行われ、物々しい雰囲気が漂った。
午後4時からはじまった会見にはフジテレビ港浩一社長のほか、嘉納修治会長、遠藤龍之介副会長、フジ・メディア・ホールディングス(HD)金光修社長、新社長に就任することが発表されたフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の清水賢治専務が出席した。嘉納氏、港氏は、HDを含め、同日付で役員を辞任すると発表。その後は一連の問題についての経緯説明が行われ、質疑応答に移った。
質疑応答では、司会から「当該女性のプライバシーの保護が最優先であるとの思いは、当初より一貫したものです。本日の会見も、名前、所属先、肩書などを含め個人の特定につながるご質問はお控えください。また、個人の人権侵害、誹謗中傷ととられる発言もお控えください」との案内があった上で開催された。
17日の会見で、「回答を差し控える」を連発しただけに、報道陣も我先にとばかりに挙手。早速、男性記者が語気を強めながら質問を投げかけたが、「個人を特定する具体的な質問は…」と司会が制止。これに報道席はざわつき、怒号が飛び交った。
そしてこの会見を“大荒れ”にした発端は、遠藤副会長による踏み込んだ発言だ。会見では、2023年6月に起きた女性と中居氏の間でトラブルについて「中居氏と女性とは異なる認識を持っていた」との説明があった。質疑応答では中居氏からはトラブルについて、2023年7月に報告があったと明らかに。その後、幹部社員は複数回にわたり、中居氏から話を聞いたという。
報道陣から中居氏と女性との「認識の違い」の聞かれると、遠藤副会長は「認識の違いについて、ちょっと踏み込んだことを申し上げるとすれば、意思の一致か、不一致ということかと思います」と発言した。さらに記者が「同意か、不同意という意味」と尋ねると、「そうです」と返答。続けて、「中居氏は同意のもとだったと認識して説明していたということ?」と問われると、遠藤氏は「はい、おっしゃる通りです」と述べた。
その後、広報局員から紙が渡され、遠藤氏は「『認識の違い』については2人だけの事案であり、同意の有無という言葉を撤回し、その内容は『お答えできない』と訂正させていただきます」とした。
この一連の出来事で報道席はさらに熱を帯びることになり、司会が制止できないほどの事態に陥った。さらには質問者以外の発言も目立ち、現場では記者が記者を諌めるといった光景も見られた。
発言の訂正はトラブルの核となる部分だっただけに、多くの記者が追及の手を緩めなかったが、中には“暴言”ともとれるような発言を登壇者らに投げかける記者の姿もあった。このやりとりはおよそ10時間半に及んだ会見の中で何度も見られた。
今回の会見は、10分間のディレイはあったものの、TVer(ティーバー)やFNNプライムオンラインでも配信され、会見の模様をリアルタイムで見守る視聴者も多く、SNS上では会見に対する反応が多く見られた。その中の意見を見てみるとフジ側の姿勢に疑問を抱く声がある一方で、「フジ側の答えが釈然としなくて腹は立つけど、記者がキレるのは違うでしょ」「フジの会見より記者の質が気になる」「一部民意がややフジに同情した感ある」と報道陣の姿勢を批判する声も見られた。
大荒れとなった会見。不用意な発言に加え、訂正が連発されるなど登壇者側の落ち度もあるが、一体それだけが原因だろうか。会見時間に制限を設けていなかったこともあり、紛糾した場を収拾させる明確な理由もなく、会見の進行に大きな影響を及ぼす言わば“無法地帯”となる時間も続いた。この状況に苛立つ報道陣の傍ら、登壇した経営陣も疲労の色を隠せずにいた。
オープンな形式が生んだ時間無制限の悪循環。会見の本来あるべき姿を考えなければいけないのは記者自身も例外ではないはずだ。
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