アニメ映画『めくらやなぎと眠る女』公開記念対談を行った(左から)村上春樹氏、ピエール・フォルデス監督
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小説家・村上春樹氏とピエール・フォルデス監督が15日、東京・早稲田大学大隈講堂で行われたアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』公開記念対談に登壇。村上氏は、アニメ化された作品を「面白かった」と語った。
【別カット】がっちり手をとりあった村上春樹氏、ピエール・フォルデス監督
この日、オンライン参加予定だったピエール監督は、スケジュールを急きょ変更して来日。「(原作の)本を読み始めた時は、ニューヨークに住んでいたんです。友人がこの本(「かえるくん、東京を救う」)を紹介してくれたんです。ユニークなスタイルで書く小説は芸術です。ひきつけられました」と村上作品への愛を語った。
作品について村上氏は「2回見たけど楽しく見ることができました。アニメ映画って正直、あんまり見ないんです。どうしてかわからないけど、興味が持てなくて。でも、この映画はアニメだと意識せずに見ることができて面白かったです」と満足げ。「ずっと昔に書いた短編集なので、何を書いたか覚えていないんですよね。映画のためのオリジナルか、僕が書いたのかもわからず、ずごく面白かったです」と笑いを誘いつつ、絶賛した。
今回は短編集のアニメ化だったが、村上氏は「長編はあんまり(アニメ化を)望まない」とし、「長編はどうしても引き算の作業になってしまうので、短編の方が意欲的なものができる気がするんです」「何かを加えて新しいものにしてほしいんです」とその理由を説明。「『アンダーグラウンド』は、映画にしてくれるとうれしいな。一種のドキュメンタリーなので、映画にしてもらえると面白いなと」と希望を込めた。
今作は、村上氏の6つの短編(『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール」』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFOが釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』)を、音楽家でアニメーション作家のピエール監督が翻案した。村上作品において、初のアニメ化となる。
ピエール・フォルデス監督にとって初の長編アニメーションで、2022年6月、世界最大の「アヌシー国際アニメーション映画祭」でプレミア上映された本作は、同映画祭で審査員特別賞を受賞。23年3月に行われた「第1回新潟国際アニメーション映画祭」では、栄えあるグランプリに輝いた。同映画祭の審査員を務めた押井守氏は本作の受賞理由として、「現代文学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3人の審査員の意見が一致した、唯一の作品」とコメント。ピエール監督が手がけた音楽は、「レザルク・ヨーロッパ映画祭」作曲賞を受賞したほか、世界各国の映画祭に出品され高い評価を得てきた。
今作は、7月26日より東京・ユーロスペースほか全国で公開される。
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