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三谷幸喜監督、「人間は基本嘘をつく生き物」そこに笑いが生まれる 韓国の映画祭で熱弁

07/08 09:02

「第28回富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭」でティーチインに参加した三谷幸喜監督

 韓国ソウル郊外の京畿道富川市(キョンギ道プチョン市)で14日まで開催中の「第28回富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭」(BIFAN)で7日、映画『記憶にございません!』(2019年)の上映後、三谷幸喜監督が登壇し、新作『スオミの話をしよう』(9月13日公開)について語った。

【画像】『スオミの話をしよう』メインキャスト一覧

 同映画祭は、ホラー、SF、ファンタジー、アクション、サスペンス、スリラーなどエンタメ性の高い話題作を世界中から集めたアジア最大級のファンタスティック映画祭。

 韓国ではこれまでに『ラヂオの時間』(1997年)、『ザ・マジックアワー』(2008年)、『ステキな金縛り』(11年)が劇場公開された実績を持つ三谷監督。昨年日本でも25年ぶりに再演された三谷幸喜作・演出の伝説的舞台『笑の大学』は、韓国版としても上演され、高い評価を得て何度も再演されている。韓国の映画・舞台好きの間でも人気が高いことから、今回映画祭からラブコールを受け、マスタークラスに招待された。

 マスタークラスは、これまで『ヘレディタリー/継承』、『ミッドサマー』などの鬼才、アリ・アスター監督や俳優・監督としても活躍するチョン・ウソンなども参加。映画祭にとっても未来の映画人を育てるための非常に重要な位置づけとなっている。

 今回、マスタークラス「三谷幸喜の人生大劇場」と題し、三谷が脚本・監督を務めた『記憶にございません!』、『ステキな金縛り』、『ギャラクシー街道』(15年)を映画祭期間中に上映。『記憶にございません!』、『ギャラクシー街道』が韓国で上映されるのは、今回が初となる。

 三谷監督が登壇した『記憶にございません!』の上映回には、収容人数いっぱいの約350人が来場。その『記憶にございません!』以来5年ぶり、映画監督作品としては9作目となる新作『スオミの話をしよう』の特報映像も上映され、三谷監督は「韓国でもぜひ上映してほしいです」とアピールした。

 『スオミの話をしよう』について、どういったきっかけで作られたのか聞かれた三谷監督は、「自分の体験談ですが、僕は家族といるときと仕事仲間と一緒にいる時、全然違う顔を見せていると思います。皆さんもそうだと思いますが、それぞれの関係性によって、いろんな顔を持っているのが人間だと思います。僕が家族といた時に仕事仲間と会った時、どっちの顔をすれば良いのか、とても困りました。その際に、このシチュエーションは映画になるなと思いました」と、明かした。

 主演は、映画・ドラマ・舞台と多方面で活躍する長澤まさみ。三谷作品には、脚本を務めたドラマ『わが家の歴史』(10年)に出演以降、三谷作・演出の舞台『紫式部ダイアリー』(14年)で主演を務めたほか、大河ドラマ『真田丸』(16年)にも出演。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22年)では語りを務めるなど、三谷監督からの信頼も厚い。

 そんな長澤演じるスオミが行方不明になり、彼女の過去を知る男たちが集まってくる。不思議なことに、彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、まるで別人…。スオミはどこへ消えたのか。スオミとは一体、何者なのか。誰が一番スオミを愛していたのか。誰が一番スオミに愛されていたのか。スオミの安否そっちのけで、男たちが熱く語り合うミステリー・コメディ。

 三谷監督は「僕は元々舞台の人間です。一度舞台を作る時と同じように映画を作ってみたいと思いました長回しで撮影し、あまりカットを割らない1シチュエーションのせりふ劇です。そんな映画を成立させるためには、芝居の上手な俳優さんじゃないとできません。長澤さんをはじめ素晴らしい俳優さんが集まってくれました。日本映画でも珍しいですが、1ヶ月近いリハーサルの時間も取りました。その結果、『スオミの話』をしようはとても面白い演劇的な映画になったと思います」と話し、「今までで一番、長澤さんが魅力的な映画ができました!」と自信をのぞかせた。

 ティーチインでは、ドラマ『王様のレストラン』でファンになったという女性から「作品を作るインスピレーションやアイデアはどういったところから湧きますか?」という質問に、「僕は俳優さんが大好きです。俳優さんからインスピレーションをもらうことが多いですし、モチベーションにつながります」と答えた三谷監督。

 さらに、コメディシーンで一番こだわるポイントを聞かれ、「人間は基本嘘をつく生き物だと思います。例えば、こうやって、映画のまじめな話をしている時、おなかすいたなと思っていたら、それは嘘じゃないですか。僕は、おなかがすいてることを絶対に皆さんに悟られないよう気を付けています…(会場笑)考えていることとしゃべってることが全然違うのが、人間だと思いますし、コメディの基本だと思ってます。自分の思ってることを全員が素直に言葉にすると、僕はそこに笑いは生まれないと思っています」と語り、興味深い話に会場から拍手が起こっていた。

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