中学から競技に打ち込み、九州チャンピオンに成長した日向学院の黒木美帆
「今まで限界に挑戦する練習をしておらず、経験も少ない。その分、伸びしろがあると信じて頑張りたい」
アイスクリームが大好物で、性格はおっとり。一見、普通の女子高生はマットに上がると生来の負けん気に火がつく。鋭い眼光で相手をにらみつけ、得意の片足タックル。レスリング女子57キロ級の黒木美帆は日向学院中高の6年間、森崎智宏監督に鍛えられて九州チャンピオンに成長した。
父の影響で園児のころにレスリング、小学では野球とゴルフに打ち込んだ。体を動かすことが生活の一部だった黒木が、再びレスリングに興味を持ったのは小6のとき。当時無敵を誇った吉田沙保里さんらを取り上げたテレビの特集番組を見て胸が躍った。中学入学と同時に本格始動した。
高みを目指すには、厳しく自分自身を追い込まなければならないのがレスリング。魅力だけは感じてほしいという思いもあって、日向学院の女子部員は“2コース”で汗を流す。競技者として励む「強化コース」と、体力アップを目的とした「楽しいコース」。運動能力が高く、やる気にあふれていた黒木は、ただ1人「強化」を歩んできた。
練習メニューは男子部員と同じ。ウオーミングアップから技術練習に至るまでハードな内容に黙々と取り組んだが、思うように上達せず。「泣くくらいなら、楽しいコースに移るか」。森崎監督に突き放されたことが悔しくてたまらず、「強くなりたい。教えてください」と懇願したことも。苦しさから決して逃げることなく、トレーニングに励んできた。
森崎監督はあえて、中学の大会に出場させなかった。本人にも伝えていない理由は「小学からの経験者にこてんぱんにやられて、やる気を失うのが怖かった。中学でみっちり鍛え上げて、高校で勝負しようと考えた」。狙い通り、高校2年から勝てるようになった。
投げ技に対する防御、低いタックルを磨き、成年選手も出場する昨秋の国体で県勢女子として初勝利。今年2月の九州新人大会では全4試合を圧勝し、大学で競技を続ける道を切り開いた。
中高一貫指導でステップアップしたものの、全国トップ選手とは大きな開きがある。「レベルの高い大学では壁にぶつかると思う」。不安はのぞかせつつも、「今まで限界に挑戦する練習をしておらず、経験も少ない。その分、伸びしろがあると信じて頑張りたい」と前向きだ。
森崎監督のことを「優しくて厳しい。お父さんみたいな存在」と言い「ここまで育ててくれて感謝しかない」。2026年に本県で開催予定の国民スポーツ大会(国スポ、国体から23年に改称)での活躍が目標。地元の晴れ舞台でたくましくなった姿を見せ恩返しする。