「金メダルしかない」
前回ロンドン大会で初めて金メダルゼロに終わった柔道男子。威信を懸けて戦いに挑む日本選手の中でも、特に重量級の復権に集まる期待は大きい。「柔道は日本で生まれた競技。金メダルしかない」。端正な顔を引き締め、力強く話す。
東海大相模高(神奈川)1年の時、団体戦の全国大会「金鷲旗」で20人抜き。早くから将来を嘱望された。だがその年の全日本ジュニアで左肩を脱臼。「外れたり、ごまかしてできる日もあったり、波があった」。万全ではない状態で臨んだ国際大会で負け続け、2012年に手術を決断した。
14年世界選手権は、成績不振で自分の100キロ級だけ選手派遣が見送られるという屈辱を味わった。「世界でこんな経験をしたのは俺しかいない」。自らを奮い立たせ、何をやるにも「まだ足りない」と練習での妥協をなくし、翌年の世界選手権金メダルにつなげた。
父・善夫さん(53)も元旭化成の選手だったため、生まれは延岡市。「地元の方に声を掛けてもらうことも増えたので勝って恩返ししたい」。幼い頃に埼玉に引っ越したため昔の記憶はないが、社会人として再び延岡の地を踏み、縁を感じる。
3月に左膝を負傷し実戦から遠ざかるものの「勝つことだけを考えてやるだけ」と、集中力を高める。何度も困難を乗り越えてきた不屈の精神で、頂点に挑む。
(2016年07月26日付紙面より)