【男子73キロ級決勝】延長でジョージアのラシャ・シャフダトゥアシビリを破り、優勝した大野将平。2大会連続で金メダルを獲得した=日本武道館
「胸を張って歴史をつくれたと言える」
準決勝、決勝はいずれも延長戦。「一瞬で勝負が終わる」。2014年の夏以降、男子73キロ級で海外勢に負け知らずの大野将平(旭化成)の頭に恐怖がよぎった。それでも、金メダルを手にしたリオデジャネイロ五輪以降「自分がどうなったら負けるのか」を追求し、対策を講じてきた絶対王者は慌てなかった。
「得意の大外刈りか内股で決めようと思っていたが、それを上回る(自分の)反応だった」。6月の世界選手権王者と対戦した決勝は延長5分26秒までもつれたが、一瞬の隙を突き、支え釣り込み足で技ありを奪った。「リオでは若さと勢いがあった。(今回は)相手に研究される中、我慢の柔道で勝つことができた。胸を張って歴史をつくれたと言える」と、2連覇の感慨に浸った。
2カ月前、心が奮い立った。天理大の2学年下で、今も一緒に稽古を重ねる66キロ級丸山城志郎(ミキハウス、宮崎市出身)が世界選手権で連覇を達成。昨年末、阿部一二三(パーク24)との東京五輪代表決定戦で、24分間の死闘の末に敗れている後輩は、失意を乗り越えパリ五輪へ再スタートを切った。「これ以上ない勇気をもらった。東京で丸山に恥じない戦いをする」と、大野は誓っていた。
優勝を決めた後、聖地・日本武道館の天井を見つめた。「ここで試合する機会も少なくなっているので、この景色を目に焼き付けようと思った」。29歳の絶対王者は「人生、一生修行。まずは(31日の)男女混合団体戦を考えたい」と、自身3個目の「金」を見据えた。
(2021年07月27日付紙面より)