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噴火2カ月、予断許さない状況 九州大大学院・清水教授に聞く

2011年3月26日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火活動が活発化して26日で2カ月。火山噴火予知連絡会は22日の検討会で「最盛期に比べて活動は低下しているが、噴火は今後も続く」と見解を表明。事態の長期化に県民や行政はどう備えるべきか、九州大学大学院の清水洋教授(火山物理学・地震学)に聞いた。(聞き手 報道部・岩切康一朗)

 ―現在の火山の状態は。

 清水 簡単に言うと、小康状態。1月下旬から本格的なマグマ噴火が始まり、火口内に溶岩が蓄積し、内部にたまった火山ガスを抜く爆発的噴火を繰り返した。その後、爆発的噴火の頻度は徐々に減り3月1日を最後に一度も確認されていない。上空からの観測で溶岩周辺の火口壁にガスの通り道が確認でき、ここからガスが抜けているとみられる。気の抜けたビールのような状態といえる。

 ―終息に向かうのか。

 清水 それは違う。というのも、新燃岳地下深くのマグマだまりには、マグマの供給が続いており、山体が膨張傾向にある。マグマの量が1月下旬の噴火前と同じレベルに達すると、再びマグマ噴火を起こす恐れがあり、予断を許さない状況だ。一方、マグマの供給が止まり、そのまま落ち着く可能性も否定できない。その場合は火口のマグマが地下に戻る「ドレインバック」が発生。噴石飛散や火砕流の危険性があるマグマ水蒸気爆発に注意が必要だ。

 ―県民や行政が気をつけることは。

 清水 今の小康状態は天がわれわれに与えてくれた猶予。行政や住民が一体となって防災対策を練り直すチャンスだ。自治体は火山活動が活発化した場合の避難計画を一刻も早く策定し、土石流の危険が高まる梅雨時期前に砂防工事をさらに充実するべきだろう。また、いざというときに行政や住民、火山学者、マスコミが減災に向けて連携できるよう、普段から顔の見える関係をつくっておくことが大切だ。

 しみず・ひろし 群馬県出身。東北大学卒。九州大学地震火山観測研究センター長。火山噴火予知連絡会総括研究官も務める。54歳。