被災地車座トークから(下) 減災・復興支援機構理事長 木村拓郎さん
2011年3月16日
火山災害では土石流対策が大きなテーマになります。雲仙普賢岳では住宅被害2500戸のうち土石流による被害が7割の2千戸。有珠山は噴火の翌年に土石流で2人が亡くなりました。水害と土石流の破壊力は全く違い、大きな岩が流れ、家を破壊し、人も命を落とします。土石流を侮らないで協力して避難するようにしてほしいです。
行政は、避難基準雨量の根拠や判断の限界などを住民にきちんと説明するべきです。山も場所で降雨量が違うので4ミリや10ミリはどの周辺を指しているのか、行政の情報は絶対ではないので自主的に判断してほしい―などです。
住民からも避難して何もなかったという話がよく出ますが、何もなくて良かったというふうに考え「避難所に遊びに行く」くらいに発想を変えなければ疲れてしまいます。
被災した場合、生活再建の資金は自力で備えをしておくのが基本です。被災者生活再建支援法で、自宅が全壊した場合は上限300万円が出ますが、足りないので自助努力として保険に加入しておくべきでしょう。ただ、行政が避難勧告、指示などで規制をかけた地域は保険金の増額も難しくなりますので、規制がない早い段階で準備しておくことを勧めます。
災害対策基本法に基づいて強制力のある警戒区域を設けたのは、平成以降で雲仙普賢岳と福岡県西方沖地震の玄界島です。罰則を伴う警戒区域を敷くと住民も区域内には入れなくなります。雲仙普賢岳では酪農や肉牛、養豚が盛んでしたが、家畜を移す場所がなく餌やりにも行けず、結局、餓死させました。火砕流や土石流が発生していない段階で財産を置いたままにしておかなければならず、農家は補償を求めましたが結局、国は一銭も出しませんでした。
新燃岳でも行政が予防措置として事前に他の場所に移すということはできます。過去の被災を参考に、被害を最小限に食い止める対策を打ってほしいと思います。
火山災害は何カ月、何年という長期に及び時間の経過とともに被害が膨らむ被害累積型の災害です。仕事ができない、客が来ないなどの経済被害も深刻化します。
雲仙普賢岳では客が減った雲仙温泉のホテルに役所が1人3千円を支払い避難者を泊めました。ホテル側も売り上げになり避難者も喜んでいました。避難所の食事も飲食店に作ってもらうなど、困ったときは知恵を出し工夫すれば乗り切り方もあります。避難が長期化すれば避難専用施設を造ってもらうのも一つの手段です。
火山灰の除去は業者に頼んだ場合は1回2、3万円はかかります。雪が多かった新潟では今年、災害救助法に基づいて役所が業者に費用を支払い除雪を行いました。灰も一人暮らしの高齢者で対処できない場合は、災害救助法を活用する方法もあるのではないでしょうか。行政も最悪の事態を想定し、いろんな手を打っておくべきでしょう。
きむら・たくろう 過去の震災、火山災害などで各都市の防災計画策定に従事し、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島噴火災害の復興にも参画した。社会安全研究所所長、災害復興学会理事。
行政は、避難基準雨量の根拠や判断の限界などを住民にきちんと説明するべきです。山も場所で降雨量が違うので4ミリや10ミリはどの周辺を指しているのか、行政の情報は絶対ではないので自主的に判断してほしい―などです。
住民からも避難して何もなかったという話がよく出ますが、何もなくて良かったというふうに考え「避難所に遊びに行く」くらいに発想を変えなければ疲れてしまいます。
被災した場合、生活再建の資金は自力で備えをしておくのが基本です。被災者生活再建支援法で、自宅が全壊した場合は上限300万円が出ますが、足りないので自助努力として保険に加入しておくべきでしょう。ただ、行政が避難勧告、指示などで規制をかけた地域は保険金の増額も難しくなりますので、規制がない早い段階で準備しておくことを勧めます。
災害対策基本法に基づいて強制力のある警戒区域を設けたのは、平成以降で雲仙普賢岳と福岡県西方沖地震の玄界島です。罰則を伴う警戒区域を敷くと住民も区域内には入れなくなります。雲仙普賢岳では酪農や肉牛、養豚が盛んでしたが、家畜を移す場所がなく餌やりにも行けず、結局、餓死させました。火砕流や土石流が発生していない段階で財産を置いたままにしておかなければならず、農家は補償を求めましたが結局、国は一銭も出しませんでした。
新燃岳でも行政が予防措置として事前に他の場所に移すということはできます。過去の被災を参考に、被害を最小限に食い止める対策を打ってほしいと思います。
火山災害は何カ月、何年という長期に及び時間の経過とともに被害が膨らむ被害累積型の災害です。仕事ができない、客が来ないなどの経済被害も深刻化します。
雲仙普賢岳では客が減った雲仙温泉のホテルに役所が1人3千円を支払い避難者を泊めました。ホテル側も売り上げになり避難者も喜んでいました。避難所の食事も飲食店に作ってもらうなど、困ったときは知恵を出し工夫すれば乗り切り方もあります。避難が長期化すれば避難専用施設を造ってもらうのも一つの手段です。
火山灰の除去は業者に頼んだ場合は1回2、3万円はかかります。雪が多かった新潟では今年、災害救助法に基づいて役所が業者に費用を支払い除雪を行いました。灰も一人暮らしの高齢者で対処できない場合は、災害救助法を活用する方法もあるのではないでしょうか。行政も最悪の事態を想定し、いろんな手を打っておくべきでしょう。
きむら・たくろう 過去の震災、火山災害などで各都市の防災計画策定に従事し、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島噴火災害の復興にも参画した。社会安全研究所所長、災害復興学会理事。