ホーム 特集 新燃岳噴火

新燃岳噴火

一覧

伐採作業中断、機器に灰混入 林業も被害拡大

2011年3月10日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火は、県内のスギ市場取扱量のおよそ半分を占める県西、県南地区の林業に影響を与えている。入山が規制されている火口から4キロ内では県有林の伐採事業などが中断、それ以外の伐採現場でもチェーンソーなどの機器に火山灰が混入してトラブルが相次ぐなど作業効率が大幅に低下。52年前の噴火では土壌の酸性化で樹木が枯れる現象が確認されており、関係者は今後の被害拡大を懸念している。

 作業が中断しているのは小林市と高原町境にある県の森林整備事業3件。西諸地区森林組合(小林市)が県有林の間伐作業を委託されていたが、入山規制に伴って作業ができなくなった。同組合の長倉敏幸参事は「来年度に繰り越すことになり、収益の減少は避けられない」と話す。

 県森林組合連合会(県森連)によると、降灰で伐採作業に影響が出ているのは県西、県南地区。いずれの現場でも火山灰がチェーンソーや下草の刈り払い機の燃料タンクに入り、エンジントラブルが多発している。「工期内に作業を終わらせることができない事業も出ている」という。さらに、枝葉に付着した火山灰は噴火後の雨で流れ落ち、地面に大量に堆積。伐採するたびに舞い上がる乾いた火山灰に作業員も苦慮している。

 このうち、都城森林組合は降灰が深刻な都城市夏尾、山田町の約20ヘクタールの山林で伐採作業ができない状態が続く。例年は2月末から苗木の植え付け作業が始まるが、「土壌の酸性化を避けるために表土を取り除いて植えなければならない。効率がさらに悪くなる」と関係者。県森連によると、こうした状況から山主からの間伐や植栽依頼、苗木の注文取り消しが相次いでいるという。

 1959(昭和34)年の噴火の際には、火山灰の積もった土壌が半年すぎて強酸化。スギやヒノキの幹が黒く変色し、枯れる被害が発生した。今回の火山灰量は同年を大きく上回っており、県は「当時より厳しい想定をしなければならない」として対策を検討している。

【写真】伐採するたびに灰が舞い上がり、作業効率の低下が懸念されている日南市の伐採現場