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ミヤマキリシマ枯死恐れ 専門家は再生期待

2011年3月7日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)噴火の影響は、希少な植生でも懸念されている。中でも、霧島を代表する花木のミヤマキリシマは、降灰の多い火口周辺や南東方向の山々に群生。専門家らは「灰に埋もれ、壊滅状態だろう」とみている。

 ミヤマキリシマはツツジ科で樹高1メートル未満の低木。ヤマツツジが高山環境に適応してできた品種で、新燃岳の火口近くや周辺の中岳、高千穂峰などの山肌に広く分布し、5、6月にかれんなピンク色の花を付ける。韓国岳からの縦走登山では、新燃岳の尾根筋が花をめでる格好の休憩スポットになっていた。

 霧島の地形と植生を調査している志学館大(鹿児島県霧島市)の岩船昌起准教授(地理学)は「根や枝が生きていれば、また萌芽(ほうが)するだろうが、火口に近いほど壊滅的だろう。根が駄目になっているとさらに厳しい」と説明。ただ、先行きについては「再生にどれほど時間を要するか問題だが、絶滅する可能性はない。生き残った株から広がっていくはずだ」と長い目で“復活”を見通す。

 ミヤマキリシマは火山灰がもたらす酸性土壌に強い。また、標高の高い場所では樹高30センチ程度にとどまり風にも強く、背丈の高い植物が生きられない厳しい環境に適応してきた。もし火山活動が完全に収まると、ミヤマキリシマの自生地は土壌が肥よくになって森林化し、日陰になって枯れるとされ、ある意味で「噴火があるから生きられる」(岩船准教授)という。

 環境省えびの自然保護官事務所(えびの市)の松尾康春保護官は「噴火が収まっても人工的に何かをすべきではないと考えている。自然に委ねるしかない。どうやって植生が戻っていくか、移り変わりを肌で感じた方がいい」と、霧島という火山帯の姿をありのまま受け止めることが大切だと考える。

【写真】新燃岳の火口東側の山肌に咲くミヤマキリシマ。多くの登山客を魅了してきた=2007年6月(自然公園財団えびの支部提供)