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養殖ニジマス一部避難 水の濁り、土石流警戒

2011年3月6日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火の影響で、高原町でニジマスを養殖する3業者は、一部を小林市の県水産試験場小林分場などに避難させている。水の濁りによる窒息死や土石流などへの不安を抱える日々。観光客の減少で出荷も激減しており、養殖業者は「商売の見通しが立たない」と頭を抱えている。

 同分場によると、同町は湧き水が豊富で水温も年間を通して安定しているため、全国的にも養殖に非常に適した環境にあるという。しかし、新燃岳近くの養魚場では1月26日の本格的な噴火以降、多量の灰が降り、土石流の危険にもさらされている。

 同分場は特例を設けて一時受け入れを提案した。同町蒲牟田の久保田貞次(74)、ミホ子(67)さん夫婦が営む養魚場ではニジマス約2千匹を同分場に避難させた。「一部だけでも安全な場所に移すことができてありがたかった」と貞次さんは喜ぶ。

 観光客の減少で料理屋や温泉施設への出荷が激減しており、毎月約2千~3500匹だった出荷数も2月はゼロ。3月も出荷の予定はない。「餌の量を調整し、成長を遅らせている」と状況が変わるのを待つミホ子さん。水槽の灰掃除に追われる毎日に「やめたいと思うこともある」という。

 ニジマスの甘露煮を生産、販売する入佐征一郎さん(68)も同町蒲牟田から広原の養魚場へニジマス約2千匹を移動させた。ただ、移動先は水量が少なく「稚魚約3万匹を育てるには足りない」と入佐さん。「ここが必ずしも安全とはいえない。商売の先行きも見えず怖い」とため息を漏らす。

 同分場の毛良明夫分場長によると、きれいな水を好むニジマスは水の濁りの程度によってはわずかな時間で全滅する可能性もあるという。毛良分場長は「まだまだ油断はできない。できるだけの支援をしたい」と話している。

【写真】ニジマス約2000匹を一時避難させた久保田さん夫婦=高原町蒲牟田