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備えよ 新燃岳再噴火【下】防災意識

2012年1月27日
■緊急避難の対応徹底

 霧島連山・新燃岳(1421メートル)火口から約10キロに位置する都城市の夏尾小(渡辺聖校長、15人)。昨年1月末の噴火では大量の灰と細かな噴石が降り注ぎ、灰は校舎や運動場などに5センチ近く積もった。現在も児童はヘルメットを着用して登下校しており、噴火に備えた避難訓練は、この1年間に3回実施した。「自分の身は自分で守る」。新燃岳周辺の小中学校では噴火以降、意識づくりも含めた防災教育に力を入れている。

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 「ここで噴火したらあそこの民家に逃げ込もう」「ここだったらこの橋の下へ」。1月17日、同校の児童は登下校中の噴火を想定し、教諭と共に約1キロの通学路を実際に歩いて避難できる場所を確認した。

 「下級生を避難させられるか不安もあるが、今回の訓練で少し安心できるようになった」と語ったのは6年生の福栄優香さん(12)。訓練後、渡辺校長は児童へ「登下校中に先生はいない。自分たちで考えて行動しないといけない」と呼び掛けた。

 教育現場にとっても本格的な噴火は初めての経験だった。渡辺校長は「昨年1月は大量の灰が降り続く中で保護者に迎えに来てもらった。保護者の安全も含め、対応が本当に正しかったのか考えることもある」と話す。当時の反省や経験を生かしながら「訓練を重ねるたびに児童の動きは機敏になっている。今後もできることをやっていきたい」との思いを強くしている。

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 「誰を迎えに行けばいいか、住民それぞれが分かっていた」。123戸約300人が暮らす高原町の南狭野区。避難勧告が発令された昨年1月30日未明、区の役員と住民が連絡を取り合い、一人暮らしの高齢者らを迎えに行って避難した。倉住宣実区長(69)は「田舎ならでは。大きな町だとこうはいかないだろう」と語る。地域の絆が緊急時の避難を支えているが、少しでも安全性を高めるため見直しを進めている。

 同区で民生委員を務める新地和広さん(60)によると、区内には一人暮らしの高齢者だけで十数人いるという。自家用車を持たず、避難に手助けが必要な人たちだ。

 同町内には緊急時に高齢者へ声を掛ける「愛の連絡員」という互助制度があり、連絡員となった住民が1、2人の高齢者を担当。「住民の平均年齢が60代後半」という同区は連絡員も高齢化しているため、新地さんらの呼び掛けでより若い世代に交代してもらった。地区の自主防災組織でも、区内に6人いる班長を組み入れ、態勢を強化した。

 新地さんは「いざというとき頼りになるのは近所の人。地域のつながりを大切にし、噴火に対応したい」と力を込めた。

【写真】新燃岳火口から約10キロの位置にある都城市夏尾小。17日には実際に通学路を歩き、噴火時の緊急避難場所を確認した=同市夏尾町