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備えよ 新燃岳再噴火【上】人手不足

2012年1月25日
■支援態勢の構築急務

 「人数が少なかったから、一人何役もこなさざるを得なかった」「初めてのことで全く慣れておらず、現場は混乱した」。霧島連山・新燃岳のふもとにある人口約1万人の高原町は、本格的噴火が始まった昨年1月26日、県内の自治体でいち早く災害対策本部を設置した。しかし、町立病院勤務者も含めて職員が172人という小さな役場は、職員がさまざまな作業や対応に忙殺された。避難してきた住民たちが詰め掛けた避難所では、混乱が特に大きかった。

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 同町では27日から自主避難者を受け入れ始めた。火砕流の恐れがあるとして30日未明には、513世帯1158人に避難勧告を発令。発令から約1時間半後、避難所となった町総合福祉保健センター・ほほえみ館には着の身着のままの住民が押し寄せた。発令解除までの約3週間、中心となって対応したのは健康づくり推進係で、職員は臨時職員2人を含めて6人だけだった。

 「本当にこれだけの人数で切り盛りしているのか」。応援派遣前に視察で訪れた他の自治体職員は驚いたという。保健師は2人いたが、電話応対や食事配膳、掃除、ごみ分別などに追われ、避難者の健康状態把握など本来の業務まで手が回らなかった。情報を伝えるためのテレビ設置や板張りの床への畳設置などは、島原市からの応援職員に助言されるまで対応できなかったほど。発令解除後、過労で体調を崩す職員が続出した。

 町はその後、効率的に避難所を運営するため、開設された場合の職員の割り当てを明確化した。現場の要望が高い避難所内の役割分担を明記したマニュアル作りはまだだが、日高光浩町長は必要性を認識。この1年を「県社会福祉協議会、西諸医師会などと応援協定を結び、専門団体に応援要請ができる。支援態勢は徐々に構築されつつある」と振り返る。

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 2月7日に開設し、同月末まで運営したボランティアセンターも県社会福祉協議会の支援を受けての開設だったが、運営する町社協職員は2人。ボランティアの申し出、派遣要請ともにニーズは高く町職員が応援に駆け付けた。

 町は昨年の教訓から町内で運営できるスタッフ育成が必要と判断。義援金を活用して町ボランティア連絡協議会に登録する町民29人を対象に昨年9月と11月の2回、雲仙普賢岳での研修も含め災害時の心構えを学んだ。町社協の西元洋一事務局長は「災害発生時には3日以内にセンターを立ち上げることを合言葉にやっている。被災者の要望に応えられるようにしたい」と気を引き締める。

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 本格的噴火後1年間に培った行政の対応や住民の取り組みを報告する。