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爆発は減少傾向 新燃岳本格的噴火から半年

2011年7月25日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火活動が本格化して26日で半年を迎える。3月1日を最後に、爆発的噴火は起こっていないが、火山噴火予知連絡会が6月に「再び活発化する可能性もある」との見解を示すなど、終息の見通しは立っていない。本格的な台風シーズンを前に、新燃岳周辺の降灰で危険性が増した土石流への警戒は続く。活動の長期化に備え、行政と住民が一体となった火山防災態勢の強化が一層、求められている。

 新燃岳は1月26日に中規模噴火を起こし、噴火警戒レベルを「3」(入山規制)に引き上げ。高原町は1月30日に火砕流を警戒して町内の一部に避難勧告を発令した(2月15日に全面解除)。3月1日まで爆発的噴火を13回繰り返し、都城市や高原町、日南市などは大量の降灰、小林市などでは約700件に上る噴石被害にも見舞われた。

 噴火は3月に7回、4月に3回と徐々に減少後、6月中旬に約2カ月ぶりに発生。同29日を最後に観測されていないが、「火山性地震は7月も、増減を繰り返しながら多い状態が続いている」(福岡管区気象台)。

 火口から半径3キロの入山規制も継続中。火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)は「地下深くのマグマだまりにはマグマの供給が続いており、小規模な噴火が散発的に起こる今の状態が数年間以上続く可能性が一番高い」と引き続き注意を呼び掛ける。

 降灰で収穫不可能となった農作物や噴石による農業施設の破損、農地埋没の被害は計約12億円。県内のホテルや旅館でキャンセルが相次いだが、新燃岳周辺の観光地もようやく客足が戻りつつある。

 大量の火山灰が堆積し土石流発生の危険性がある都城市と高原町の35渓流では、国土交通省が砂防ダムにたまった土砂を取り除き、容量を増やすなどの緊急対策工事を行った。被害を伴う土石流は発生していない。

 土石流を警戒し、都城市は避難勧告5回、避難準備情報(単独)2回、高原町も避難準備情報を2回出した。国が避難の参考になる基準雨量を緩和したことなどを受け、避難勧告基準の見直しは都城市5回、高原町4回に及び、手探りの対応が続く。ただ都城市が避難勧告、避難準備情報を出した際の避難率(公設の避難所対象)の平均は2・7%。本格的な台風シーズンの到来を控え、避難率の低さは課題となっている。

 一方、県や周辺自治体、関係機関は火山防災対策を話し合う「コアメンバー会議」を開催。都城市と高原町は、土石流や火砕流に備えた避難計画を完成させた。「(火山防災態勢の構築へ)一定の積み上げができた」と県危機管理課。鹿児島県と協力し、年2回のペースで会議は続けるという。会議を主導した内閣府は「現状に満足することなく、避難訓練などを通して避難計画を検証することが大切。会議で取り組みの進捗(しんちょく)状況を共有し合いながら、有事に備えた防災態勢を確立してほしい」としている。