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農家「ひとまず安心」 都城周辺土壌酸性化被害少なく

2011年7月25日
 霧島連山・新燃岳の噴火直後、都城市を中心に大量の火山灰で田畑が覆われた。火山灰による土壌の酸性化は、収量減少や品質低下などを引き起こす恐れもある。灰の除去や懸命な中和作業に農家が取り組み、現在まで大きな被害は報告されていない。しかし、「長期的にみて、本当に大丈夫なのか」と拭い切れない不安を抱える農家もいる。

 「あーこれじゃ、今年は駄目だ」。1月下旬。大量の降灰に見舞われた都城市夏尾町に1ヘクタールの田を持つ農家紺谷生湧さん(70)は、真っ白な田んぼの前に立ち尽くした。

 灰の厚さは約10センチ。当時、育てていた牛用の飼料作物は灰で全滅した。重機を使って田の灰をすべて取り除くのに10日かかった。5月末に田植えはしたものの「作物が育ちにくくなるのでは」と不安が消えなかった。

 県や市の指導を参考に、土に混ぜ込む石灰の量を増やし土壌の中和作業を行ったり、残った灰の影響を少しでも和らげるため例年より約30センチ深く耕したり「できることはすべて試してみた」という。

 刈り取りを10月に控えた今、目立った影響は見られない。「例年より1株から出る稲の本数は少ないが、春先の渇水や梅雨時期の大雨によるものだろう。ひとまずほっとしている」と、紺谷さんは青々とした稲をなでた。

 県営農支援課によると、現段階で降灰被害地域の農家から土壌への影響の報告はないという。同課の福田武美主幹は「大量の降灰は1月26、28日だけだったのが良かった」と指摘。26日に降った灰の酸性値を示すPHは作物に問題がない6前後だった。28日の灰はPH4~5の強酸性で心配されたが、「農家が現場で対策を実践してくれたのが奏功したのだろう」と福田主幹は語る。

 ただ、火山灰の怖さを目の当たりにしてきた農家からはいまだに不安が漏れる。

 都城市高木町の農事組合法人「きらり農場高木」は収穫期を迎えたホウレンソウが1月下旬の降灰で打撃を受けた。丁寧に洗浄して出荷する手間がかかった上に、売値が2割弱落ちた。中之丸新郎組合長は「あれだけ降ったんだから影響がないとはなかなか考えられない。被害が見えてくるのはこれからではないか」と気を引き締めている。

【写真】青々とした稲を前に、「火山灰による土壌への影響は今のところ見られない」と安堵(あんど)の表情を見せる紺谷さん=都城市夏尾町