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活動長期化心構えを 藤井敏嗣・予知連会長に聞く

2011年7月25日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火活動が活発化して26日で半年。火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大学名誉教授)に現在の火山の状態や今後の見通しを聞いた。(報道部・岩切康一朗)

 ―予知連は、6月の例会で「新燃岳の噴火活動は低下傾向にある」との見解を発表した。その後、6月に噴火が3回発生。火山性地震も多い状態が続いている。活動は活発化傾向にあるのか。

 藤井 そうは思わない。6月の噴火では、噴出物にマグマが固まってできる物質が少し増えていたものの、噴火の規模を表すデータとしての噴煙の高さは最大千メートル。1月下旬の7千メートル(レーダー解析)の噴煙とは比べものにならず、噴出した火山灰の量も少ない。地震は地表に近い場所で起きており、マグマと地下水が接触した際の蒸気の移動により発生していると考えられる。火山活動の活発化を示す地下のマグマの動きに伴うものではない。

 ―今後の見通しは。

 藤井 地下深くのマグマだまりに新たなマグマの供給が続いており、1月下旬の噴火前の半分ぐらいはたまっている。この大量のマグマが一気に山頂に移動した場合は、1月下旬の噴火と同レベルの噴火が起こる可能性がある。ただ今のところ、そういった兆候はない。マグマが少量ずつ移動し、1、2週間おきに小規模な噴火を繰り返す状態が少なくとも数年間続く可能性が高い。この半年で観測態勢はかなり充実し、今後大規模な噴火が起きる場合は、事前に何らかの現象をキャッチできるはず。気象庁が出す情報に注意を払ってほしい。

 ―江戸時代の1716~17年に1年半続いた「享保の噴火」と同じ噴火様式をたどるのではとの指摘もある。

 藤井 享保の噴火は大きな噴火を起こした後、数カ月間の小康状態を経て、再び激しい噴火に至ったが、今回も同じパターンで起こるとの保証は全くない。ただ、享保の噴火では大量のマグマが数回山頂に移動しており、この点からもこのまま終息に向かうとは考えない方がいいだろう。

 ―活動の長期化に県民はどう備え、対処すべきか。

 藤井 新燃岳は、比較的落ち着いた状態が続いているため気が緩みがちだが、決して終わりではないということをもう一度認識してほしい。一方で、火山の寿命は数十万年とされ、活発な時もあれば静かな時もある。わずか半年で状態を判断しようというのは無理な話で、火山と共存していくという心構えを持つことが重要だ。そのためにも万が一に備え、火山防災態勢を構築し、普段から関係機関同士が顔の見える関係をつくっておきたい。(鹿児島空港で)

 ふじい・としつぐ 1946(昭和21)年、福岡県出身。東京大卒。89年に同大学地震研究所教授。2003年から火山噴火予知連絡会会長。現在、NPO法人環境防災総合政策研究機構専務理事。専門はマグマ学。東京都在住。