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新燃岳周辺に今も火山灰 台風通過前と変わらず

2011年6月7日
 降灰による土石流の恐れがある霧島連山・新燃岳(1421メートル)の火口周辺で、台風2号の影響で総雨量100ミリ超の雨が降った直後の5月30日、台風接近前と変わらない大量の火山灰が堆積していたことが、無人ヘリを使った東京大学地震研究所・金子隆之助教(火山地質学)の調査で分かった。

 火山灰の厚さは、都城市や高原町のある南東側斜面で5~10メートル、南西側斜面で数十センチから約1メートルと推測される。金子助教は「今後も引き続き土石流や泥流への警戒が必要」としている。

 これまでは火口から3キロの入山規制で、降灰量を把握するのが難しかった。金子助教は5月中旬から下旬にかけて無人ヘリを使い火口内の観測のほか、火口周辺に衛星利用測位システム(GPS)や地震計などの機器を設置する作業を行った。

 台風前の5月22日、火口上空約100~200メートルの高さから撮影した写真により、噴火時に風下となることが多かった南東側斜面に5~10メートル、南西側に数十センチ~1メートル弱の火山灰が積もっているのを確認した。

 同市山田町で降り始めからの総雨量130ミリ超を観測した後の30日にも、南西側を撮影。22日の写真と比べたところ、火山灰の堆積量に大きな変化は見られなかったという。金子助教は「ヘリが飛ばせなかった南東側も同様の状況」と推測する。

 火口南側斜面では、国土交通省九州地方整備局が3月上旬に確認したごく小規模の土石流の痕跡も撮影。このほかに大きな土石流や泥流の痕跡はなかったという。

 火口に蓄積された約直径600メートルの溶岩の大きさや形状は、2月上旬と変化はなかった。噴火で飛ばされた噴石が落ちた時にできたと思われる無数のくぼみや亀裂が見られた。

 台風に伴う雨で火口周辺の灰の堆積量に変化がなかった理由について、金子助教は「新燃岳の灰は細かい灰ではなく、粒状の灰なので、水を通しやすく染み込んでいるのかもしれない」と推測。「無人ヘリの写真から、火山活動は小康状態を保っており、火山灰が雨で流されず火口周辺に残っていることもあらためて証明された。今後も土石流や泥流が発生する恐れがある」と注意を呼び掛けている。

 宮崎地方気象台によると、新燃岳周辺では梅雨前線の影響で、7日の昼前、雷を伴って激しい雨が降る恐れがあるという。7日夕方までに予想される1時間当たりの最大雨量は30ミリ、24時間雨量は100ミリの見込み。

【写真】数十センチから1メートル弱の火山灰の堆積が確認された新燃岳の南西側斜面=5月30日、東京大学地震研究所撮影