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雨量伸びず安堵 台風接近で新燃岳周辺

2011年5月30日
 台風2号が本県に接近した29日、土石流発生の恐れがある霧島連山・新燃岳(1421メートル)周辺では27日からの総雨量が1月末の本格的な噴火以来最も多く、初めて100ミリを超えた。自治体や国は警戒態勢を取っていたが、1時間当たりの雨量が伸びなかったこともあり、29日現在、土石流は確認されなかった。関係者は「台風の勢力が弱まり救われた」と胸をなで下ろす一方、降り続いた雨による地盤の緩みを懸念する声も。土石流から住民を守るための関係機関の模索は続きそうだ。

 強い雨が予想されていた同日午前、国交省宮崎河川国道事務所では職員25人が情報収集に当たった。新燃岳周辺の降灰地域で土石流の危険性が高い渓流14カ所にカメラを設置しており、事務所内のモニターで現場の状況を常時確認した。

 宮崎地方気象台によると、27日の降り始めから29日午前7時までの新燃岳周辺での総雨量は都城市西岳町で114ミリ、同市御池で106ミリ。通常はほとんど水がない渓流で水位や流れの勢いが増し、気象台や自治体と電話でひんぱんにやりとりする場面もあったという。

 同事務所と県が同日午後、危険渓流35カ所で水の濁りや土砂の堆積を目視で点検した際には土石流の発生は確認されなかった。同事務所の鶴崎秀樹副所長は「台風の勢力が弱まり救われた」、工務第二課の杉山光徳課長は「短時間に急激な雨が降らず、満遍なく降ってくれた」と、胸をなで下ろす。

 一方、28日に災害対策本部を設置し警戒を続けた都城市。土石流災害の避難の参考となる雨量基準を火口から8キロ内では1時間15ミリ以上、10~20キロ内で1時間20ミリ以上と決めている。29日には15ミリ以上の雨量が予想されたが、現場の降雨の状況や気象レーダーによる雨雲の動きなどから勧告発令を見送った。

 総雨量では100ミリを超し、警戒地域の地盤の緩みが想定される中、今後も避難の雨量基準は総雨量ではなく、1時間当たりの雨量だけを重視するのか―。同市の池田吉平総務部長は「総雨量が何ミリのときにどうなる、というデータがなく、市だけで独自の判断を下すのは難しい。ただ、今後の国や県の調査結果によっては、総雨量も新たに判断材料として加わる可能性もある」としている。

【写真】高原町の祓川上流で土石流が発生していないか調査、確認する関係者=29日午後