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新燃岳噴火の“前兆”捉える 気象庁など観測態勢強化

2011年4月26日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)が本格的な噴火活動を始めた1月下旬以降、気象庁や研究機関は新燃岳周辺に地下のマグマの動きを把握する地震計や傾斜計を増設し、観測態勢を強化してきた。噴火の前兆とみられる現象を捉えるなど成果が徐々に現れ始め、気象庁は観測情報を定期的にホームページ(HP)で発表。「噴火の備えに役立ててほしい」としている。

 気象庁や大学などの研究機関は地震計14台のほか、地表の膨らみを計測する傾斜計7台、GPS(衛星利用測位システム)10台、重力のわずかな変化を見逃さない絶対重力計1台などを順次増設した。新燃岳周辺の観測機器は69台(4月25日現在)と、噴火前の22台から3倍以上に。この数は「観測網の充実した桜島に匹敵する」(気象庁)という。

 観測態勢強化が効果を発揮し始めたのは3月上旬から。3月2日から4月25日にかけて、小・中規模の噴火が8回発生。このうち6回は火山性地震回数が100回以上を記録した日から3日以内に噴火している。「噴火の前後は地下深くのマグマだまりにあるマグマが山頂へ移動するため、ほとんど体に感じない火山性地震が増える」「噴火の前に山体が膨らみ噴火後に収縮する」との予兆現象が傾向として現れてきたとみられる。

 気象庁は毎週月、金曜日に火山性地震の回数と山体の膨張・収縮の変化をHPで公表。「前兆現象が現れても噴火しないこともあるし、噴火までの時間を予測するのは難しい」とした上で、「噴火に備えるための一つのデータとして活用してほしい」と呼び掛ける。

 火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大学地震研究所名誉教授)は「新燃岳の短期的な活動予測はできつつある。ただ、依然として中長期的な活動予測は難しく、マグマだまりへのマグマの供給量などを注視していく必要がある」と指摘している。