育ちすぎに農家焦り 県内食鳥処理場40日ぶり全面再開
2011年3月2日
県内10カ所の大規模食鳥処理場のうち、鳥インフルエンザの影響で稼働が停止していた日向市の2カ所が1日に再開し、県内の食鳥処理体制は約40日ぶりに平常を取り戻した。最大6カ所が停止し、県全体の処理能力が半減していただけに関係者は安堵(あんど)。一方、出荷遅延により鶏が成育しすぎたため、処理ペースが低下。正常化には3週間以上かかるなど問題は今後も尾を引きそうだ。
日向市美々津町の「宮崎くみあいチキンフーズ」北部工場では同日、25日ぶりにブロイラーの処理、出荷を再開。児湯地域の農家2戸から約1万8千羽が持ち込まれ、8時間ほどで処理を完了。県外に出荷した。
同社によると、移動制限による出荷停止の影響で、通常なら生後52日で入荷される鶏が今後は同75日前後で入ってくるという。鶏が大きくなることで、作業機器への負担が増し処理能力は通常の約7割まで低下。大きすぎてトレーに入らないなどの理由から商品価値の低下も懸念される。
出荷待ちの農家は、同社関係だけで60戸以上に上るが、待機分の処理が完了するには今月いっぱいかかる見込み。同社の花盛俊樹常務は「一刻も早い出荷待ちの解消に努めたい」と語る。
日向市でブロイラーを飼育する男性の農場では出荷予定日を過ぎているが、出荷先からは「3週間は待たないといけないだろう」と説明された。男性はカロリーの低い餌で成長を抑えているが、「こんな経験は初めて。今後の経営がどうなるかなど不安だらけ。鳥の免疫力が下がることも考えられるので早く出荷したい」と焦りを隠さない。
処理場閉鎖の影響を受けたのは農家だけではない。県トラック協会によると、県内には養鶏場から食鳥処理場まで鶏を運ぶ業者や、鶏肉を県内外に輸送する業者が約30社ある。処理場の停止が始まった当初から影響を受けており、同協会の野中秋芳専務理事は「ブロイラーの輸送は専門車両を使うため、別の荷物を運べない。再開で一安心」と胸をなで下ろす。
鶏肉の品不足に頭を悩ませていた小売店も処理場再開を喜ぶ。県内に4店舗を展開する「スーパーマーケット江南」(宮崎市)は、人気のもも身が通常の1割程度しか確保できない時期もあった。同社精肉バイヤーの押川英樹さんは「品切れでお客さまに迷惑を掛けた。処理場再開は朗報」と話していた。
【写真】出荷予定日を過ぎたブロイラー。出荷は3週間後になる見通しだという=1日午後、日向市(農場主の男性撮影)