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感染経路解明進まず 渡り鳥滞在長期化恐れ

2011年2月20日
 県内の高病原性鳥インフルエンザの発生から1カ月が経過した。県内12養鶏場で感染疑いが確認され約96万羽が殺処分される事態に発展しているが、感染経路の特定は困難を極める。さらに、野鳥の死骸からも感染疑いが散発的に確認されるなど終息に向けた道筋は見いだせていない。県内で越冬する野鳥の大陸への移動が一つの節目とみられるが、養鶏場での多発や野鳥の感染など発生パターンは例年と大きく異なっており、「今年が鳥フル対策の分岐点になる」とみる専門家もいる。

▽渡り鳥との関連深い
 国内養鶏場での鳥インフルエンザは渡り鳥との関連が深く、発生時期は大陸から飛来した野鳥が国内各地で越冬する1~2月ごろに集中してきた。宮崎市清武町、日向市東郷町、新富町の3養鶏場で鳥インフルエンザ発生が確認された2007年も発生は1月上旬から同月下旬。渡り鳥が大陸に戻る2~4月ごろが「終息に向けためど」とされてきた。

 カモ類は、12月半ばから翌年2月上旬ごろをピークに県内の河口や大きなため池などで越冬。4月の終わりごろまでには大部分が本県を離れる。環境省の調査では、本州や朝鮮半島を経由しながらロシアや中国の営巣地に戻っていることも確認されている。

 ただ、今季は全国的に冷え込みが厳しく、温暖な本県に長くとどまることも。野鳥に詳しい宮崎大フロンティア科学実験総合センターの中村豊技術専門職員は「大陸に戻るのが遅くなる可能性も否定できない」と話す。

▽伝播の可能性低い
 「昨年の口蹄疫と違い感染の面的な広がりはない」。宮崎大農学部の後藤義孝教授(獣医微生物学)は今回の感染拡大をそう分析する。自衛隊の協力などもあり殺処分が滞る場面もなく、養鶏場間の伝播(でんぱ)の可能性が低いためだ。国の疫学調査チームが公表した県内1~11例の調査報告書でも、養鶏場間での伝播の可能性は示されていない。

 一方で、報告書で共通項として浮かび上がるのが11例中10例で指摘されたネズミのふんや死骸、通過できる穴などだ。07年の発生養鶏場の疫学調査でもこれらは確認されており、ウイルス持ち込みの可能性が指摘されていた。ただ、宮崎大農学部の堀井洋一郎教授(獣医寄生虫病学)は「ネズミは養鶏場ならどこにでもいて決定的要因と言い切れない」と述べる。

 不安視されるのが感染が疑われるオシドリの死骸が3例(延岡市、日南市、宮崎市)確認されていることだ。大きなため池や河口付近に生息するカモ類に対し、オシドリは養鶏場の多い山間部の渓流沿いなどに生息する。

 県内の野鳥愛好家の間でも数が少なく観察が難しい鳥とされていたが、中村専門職員によると、今季は小丸川上流の川原ダム付近で1500羽ほど確認された。堀井教授は「ウイルスを養鶏場近くまで運ぶ鳥にも感染が広がっているということ」と指摘する。

▽夏場の警戒も
 今季、県内ではカイツブリ(諸塚村)やハヤブサ(西都、宮崎、延岡市)など、多くが国内にとどまる留鳥でも死骸から感染疑いが確認された。オシドリも一部で留鳥化しており、地域へのウイルス定着という「最悪のシナリオ」も想定される。

 後藤教授は「可能性は低いが、そういう事態になればシーズンを過ぎた夏場の警戒も必要。留鳥のウイルスの保有状況を調べる必要が出てくるかもしれない」と語る。

 堀井教授は「ほぼ固定された渡りのルートに宮崎があるということが深刻。早急に来季に向けた態勢を再構築しなければならない」と、抜本的な対策の必要性を訴える。