宮崎だけ拡大、なぜ? 要因つかめず専門家も苦悩
2011年2月2日
宮崎市高岡町で1日、高病原性鳥インフルエンザの感染疑いが確認された。1月21日の県内1例目から10日余りで7例目。同じく養鶏場での発生があった島根、鹿児島、愛知県がいずれも単発に抑え込む中、本県は新富、都農、川南、高鍋町と延岡市を含めた2市4町に感染が広がっている。渡り鳥の増加や防疫の不備などさまざまな要因が絡み合っているとみられるが、「なぜ宮崎だけ」という問いと抜本的対策には疫学や野鳥の専門家も答えを見いだせていない。
▽渡り鳥の増加
口蹄疫を想起させる感染拡大。河野知事は1日の会見で「非常に深刻だ。とにかく感染を食い止めたい」と険しい表情を見せた。
しかし、会見の5時間後には7例目の感染疑いが発表され、殺処分対象は前回(2007年)の4倍近い約77万羽に膨らんだ。ある農政水産部職員は「こんなに続くとは」と疲労感をにじませた。
渡り鳥がウイルスの「運び屋」とされる鳥インフルエンザ。日本野鳥の会県支部(前田幹雄支部長)によると、県内の渡り鳥の数は、全国的な冷え込みの影響で今季は増えているという。
ただ、前田支部長は「渡り鳥の増加は鹿児島や熊本も同じで発生が本県に集中していることを説明するには不十分。(野鳥や小動物、虫など)鶏への“媒介者”の特定を急ぐ必要がある」と指摘する。
▽防疫に温度差
今季、発生が確認された鹿児島、愛知県も養鶏場の密集地域だったが、感染はいずれも1例のみ。本県の農場調査に同行したある関係者は「養鶏場ごとに防疫に差がある。敷地内に野鳥のふんが落ちているところもあった」と県内の実態を明かす。
農林水産省の疫学調査チームの報告でも、ウイルスの侵入経路になった可能性がある不備が挙げられている。
「防鳥ネットの隙間や穴」「靴の履き替え・作業着の未交換」「壁の破損」「侵入防止用の金網などに隙間や破損、壁にはネズミなどの侵入が可能な穴」などだ。
ただ、同チームメンバーで日本野鳥の会の金井裕主席研究員は「他県の養鶏場が完璧であるとも考えにくく、防疫対策だけが原因とも言い切れない。頭を抱えている」と吐露する。
一方、発生前の県の指導については疑問の声もある。昨年10~12月、2度実施した全養鶏場に対する飼養衛生管理基準の順守状況調査で、県の家畜防疫員(獣医師)の直接訪問は全体の4分の1。残りは養鶏場の系列企業の管理獣医師や技術指導員などに依頼していたためだ。河野知事も1日の会見で、調査方法の見直し方針を示した。
▽ワクチンには否定的
打つ手はないのか。国の防疫指針では、同一制限区域内の複数農場で続発し、処分が滞る場合の措置としてワクチン接種を選択肢の一つとして明記している。
農水省動物衛生課によると、口蹄疫と同様にワクチンは発症こそ抑えるものの感染を防ぐことはできず、接種家畜の殺処分が原則。経済的な打撃は大きい。また症状が分かりにくくなり、まん延を見抜くのが難しくなることから、同課は「ヒトに感染するようなウイルスの変異を引き起こす危険もある」として使用には否定的だ。
県は口蹄疫のまん延を受け、イベント開催や外出自粛を求める「非常事態」を宣言した経緯もあるが、県総合政策課の永山英也課長は「可能性として除外はしないが、具体的検討には至っていない。今は農場での防疫に最大限の力を入れるべき」と話す。
有効な打開策が見えない中、識者の多くは防疫徹底という原点に現時点での結論を求める。その中で、宮崎大農学部の末吉益雄准教授(家畜衛生学)は「農場だけでなく野鳥が飛来するため池がないかなど周囲の環境にまで気を配る必要がある」と、防疫に新たな視点も求める。
▽渡り鳥の増加
口蹄疫を想起させる感染拡大。河野知事は1日の会見で「非常に深刻だ。とにかく感染を食い止めたい」と険しい表情を見せた。
しかし、会見の5時間後には7例目の感染疑いが発表され、殺処分対象は前回(2007年)の4倍近い約77万羽に膨らんだ。ある農政水産部職員は「こんなに続くとは」と疲労感をにじませた。
渡り鳥がウイルスの「運び屋」とされる鳥インフルエンザ。日本野鳥の会県支部(前田幹雄支部長)によると、県内の渡り鳥の数は、全国的な冷え込みの影響で今季は増えているという。
ただ、前田支部長は「渡り鳥の増加は鹿児島や熊本も同じで発生が本県に集中していることを説明するには不十分。(野鳥や小動物、虫など)鶏への“媒介者”の特定を急ぐ必要がある」と指摘する。
▽防疫に温度差
今季、発生が確認された鹿児島、愛知県も養鶏場の密集地域だったが、感染はいずれも1例のみ。本県の農場調査に同行したある関係者は「養鶏場ごとに防疫に差がある。敷地内に野鳥のふんが落ちているところもあった」と県内の実態を明かす。
農林水産省の疫学調査チームの報告でも、ウイルスの侵入経路になった可能性がある不備が挙げられている。
「防鳥ネットの隙間や穴」「靴の履き替え・作業着の未交換」「壁の破損」「侵入防止用の金網などに隙間や破損、壁にはネズミなどの侵入が可能な穴」などだ。
ただ、同チームメンバーで日本野鳥の会の金井裕主席研究員は「他県の養鶏場が完璧であるとも考えにくく、防疫対策だけが原因とも言い切れない。頭を抱えている」と吐露する。
一方、発生前の県の指導については疑問の声もある。昨年10~12月、2度実施した全養鶏場に対する飼養衛生管理基準の順守状況調査で、県の家畜防疫員(獣医師)の直接訪問は全体の4分の1。残りは養鶏場の系列企業の管理獣医師や技術指導員などに依頼していたためだ。河野知事も1日の会見で、調査方法の見直し方針を示した。
▽ワクチンには否定的
打つ手はないのか。国の防疫指針では、同一制限区域内の複数農場で続発し、処分が滞る場合の措置としてワクチン接種を選択肢の一つとして明記している。
農水省動物衛生課によると、口蹄疫と同様にワクチンは発症こそ抑えるものの感染を防ぐことはできず、接種家畜の殺処分が原則。経済的な打撃は大きい。また症状が分かりにくくなり、まん延を見抜くのが難しくなることから、同課は「ヒトに感染するようなウイルスの変異を引き起こす危険もある」として使用には否定的だ。
県は口蹄疫のまん延を受け、イベント開催や外出自粛を求める「非常事態」を宣言した経緯もあるが、県総合政策課の永山英也課長は「可能性として除外はしないが、具体的検討には至っていない。今は農場での防疫に最大限の力を入れるべき」と話す。
有効な打開策が見えない中、識者の多くは防疫徹底という原点に現時点での結論を求める。その中で、宮崎大農学部の末吉益雄准教授(家畜衛生学)は「農場だけでなく野鳥が飛来するため池がないかなど周囲の環境にまで気を配る必要がある」と、防疫に新たな視点も求める。